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目的
シンチグラフィとは、体内に投与された放射性同位元素(RI)が特定の臓器あるいは組織に集積された状態を、体外からシンチカメラなどを用いて、分布図を描出する検査である。
使用される放射性医薬品には①正常組織に集積するもの②異常組織に集積するものとがあり、臓器や目的に応じ多種類に及ぶ。
また、集積される部分を陽性描出、集積欠損部位を陰性描出という。
得られる情報には、
①目的臓器や組織の位置、形態、RI集積能②臓器内のRI分布、腫瘤性病変の存在、などがある。
最近、質的診断のみならず機能評価、肝切除時の術前肝予備能検査、TAEなどの治療効果判定に利用されている。

適応・禁忌
1)適応
①びまん性肝疾患、限局性肝疾患、その他肝・胆道系に病変が疑われる場合
②PTPE(術前経皮経肝門脈塞栓術)、TAE(肝動脈塞栓術)などの治療効果判定
③肝切除時の術前肝予備能評価、術式の選択にも有用
2)禁忌
絶対;過去に当該検査にて重篤な副作用(アレルギー反応、ショック等)をおこしたことがある場合
慎重;放射線関連検査にて、悪心、嘔吐、意識障害などの既往のある場合
妊娠の疑い、もしくは妊娠中、出産後で母乳を与えている場合

準備
肝シンチグラフィを行う際、最も大切なことは、患者が正確な診断を得られるよう介助することである。
どのシンチグラフィにおいても、体内に「放射性物質」が入ることに対する不安感があり、その不安を取り除く必要がある。
1)シンチグラフィとは
目的とする臓器や組織に集積した薬(放射性医薬品)から出る放射線を専用のカメラで撮影し、病気の有無、程度を知るための検査である。
2)放射性医薬品とは
RIで標識した薬を放射性医薬品という。半減期が短く、体外に早く排出され、できるだけ弱い線量のものを用いている。
3)この検査は安全か?
使用する薬品は極少量で、それによる影響はほとんどない。被験者1回あたり0.3~10mSv(シーベルト)で、胃透視検査と同等か、それ以下である。
4)胎児・母乳への影響は?
被曝線量は、発ガン・奇形誘発の線量よりはるかに低く、安全であるが、患者にとっては大きな不安材料である。
妊娠可能な女性で、妊娠の有無が不明な場合、「10日ルール」を採用するほうが望ましい。
また、母乳中にも放射性物質が排泄されるため、4時間程度は授乳を制限したほうがよい。
5)患者への準備
①検査中の注意事項:待ち時間、撮影時間の必要性を説明する。
②一般状態の把握:バイタルサイン、体調、過去に同様の検査で悪心、嘔吐などの副作用がなかったかなど再度問診を行う。
③前処置などの確認
④検査室の準備の確認:患者急変の対応と処置

前処置
①検査前、少なくとも6時間は禁飲食とする。
これは、放射性医薬品が体内の生理的代謝を利用し標的臓器に集積するため、スムーズに代謝されるようにする。
また、精神的影響による嘔気、嘔吐の予防的役割もある。
②67Gaシンチグラフィの際には、撮影前日に下剤を服用させるか、当日に浣腸を行う。
診断の妨げになる、腸管内に排泄された生理的RIの集積を排除するためである。

検査中の介助と終了後の注意点
一般に、介助の必要はない。
老年・小児・衰弱患者など協力を得にくい患者の場合は、身体の固定が必要である。
乳幼児の場合、検査30分前に鎮静剤を投与することがある。
介助のため入室する場合はX線防護用エプロンや手袋を着用する。
検査終了後は患者本人が放射線源となるので、不要な被曝を避けるため、必要以上の接触は避け、排便・排尿についても、2~3時間は管理区域内のトイレなどを使用するように指導する。

<肝シンチグラフィ>
1)コロイド肝シンチグラフィ
原理と目的
細網皮内系細胞の異物貧食作用を利用した検査法で、肝臓のKupffer細胞(全身の網内系の80~90%)が、RIで標識されたコロイドを取り込むことにより、肝臓の位置、大きさ、形態などが簡単に診断できる。

方法
放射性医薬品99mTc-スズコロイドまたは99mTc-フチン酸(74~185MBq)を静注し、20~30分後にシンチカメラを用いて前面、後面、左側面、右側面の4方向で撮像する。径3㎝以下の病変を検出することは困難だが、SPECTを用いると径1~1.5㎝の病変まで診断可能である。
診断のポイントと臨床的意義
①びまん性肝疾患
<肝硬変>右葉の萎縮・左葉の軽度腫大を呈し、肝内のRI分布は不均一である。非代償性肝硬変では、肝は萎縮し相対的に脾腫が著名となる。
<慢性肝炎>肝腫大(特に左葉)や、重症度に応じた脾の腫大とRIの集積亢進がみられる。
<急性肝炎>肝は全体に腫大し、脾の描出は軽度、肝壊死巣は、欠損像として描出される。
<劇症肝炎>肝は萎縮し、RIの集積は低下し、不均一な分布を呈する。脾臓と骨髄の描出がみられる。
<脂肪肝>肝の変形はなく、RIの集積は均一に低下、通常のCTの低吸収域の鑑別に有用な場合がある。
<急性アルコール性肝炎>肝網内系細胞障害をきたせば、肝は描出されない。
<特発性門脈圧亢進症(Banti症候群)>著名な脾腫を認めるが、肝の萎縮は目立たずRI集積も保たれている。
<Budd-Chiari症候群>下大静脈に直流入する短肝静脈付近の血流が保たれ、尾状葉が大きくなるためRI集積が相対的に増加する。

②肝腫瘤性病変
網内系細胞を含まない腫瘤はすべて、欠損像を示すため、肝腫瘤性病変の質的診断は困難である。
肝・脾の両方に欠損像があれば、悪性リンパ腫を念頭に置く必要がある。
<結節性腺腫様過形成(FNH)>RI集積を示す腫瘤で、1/3はhotに、1/3はiso-uptakeを示す。
<肝腺腫>通常は欠損像で、陽性描出されることがある。
<腺腫様過形成>細胞密度が増加しており、hotないし正常なRI集積を示す。

2)アシアロ肝シンチグラフィ
原理と目的
肝細胞膜表面に存在するアシアロ糖蛋白受容体の分布状態を調べる検査法である。
この受容体を介し、肝細胞は血液中のアシアロ糖蛋白を取り込むため、肝機能の評価が可能であり、肝区域ごとの機能分布を知ることができる。

方法
放射性医薬品99mTcGSA、185MBqを静注し、直後より20~30分間、シンチカメラにて心臓および肝臓を撮像する。
収集されたデータを、肝・心の放射能曲線を解析し肝内の受容体数の評価を行う。
SPECTによる撮像にも適している。

臨床的意義
①びまん性肝疾患
99mTc-GSAの血中消失速度を示す指標はHH15(15分後の心放射能/3分後の心放射能:血中残存率)、肝集積率を示す指標はLHL15(15分後の肝放射能/15分後の肝の放射能+15分後の心の放射能:肝摂取率)で表し、劇症肝炎の診断や、慢性肝炎や肝硬変の重症度判定にも有用である。

②肝腫瘤性病変
肝細胞癌や転移性肝癌にはアシアロ糖蛋白受容体が存在しないため欠損像となる(図1)。
腺腫様過形成(AH)や限局性結節性過形成(FNH)では、正常~高集積を示し、高分化型肝細胞癌との鑑別診断にも有用である。

③肝予備能の評価
SPECT画像を用いて肝機能を評価することが可能となり、臨床的に広く用いられるようになった。
予定術式の切離線を想定して機能的切除率を算出し、肝切除術式の選択に応用されている。
また、TAE、PTPA前後の肝再生・肝予備能評価にも有用である(図2)。

3)PET(陽電子放射線断層撮影法)
原理と目的
必須アミノ酸であるメチオニンを使用し、肝臓のアミノ酸代謝を利用する検査である。
メチオニンは蛋白合成、脂質合成などに利用されるため(代謝の約85%が肝臓)、肝臓のアミノ酸代謝活性を指標化することができる。

方法
放射性医薬品11C-Methionine、555MBqを静注し、約30分後に撮像する。
肝への集積度をDARを用いて定量評価する。
また、部分肝機能評価をFVIとし、術前の残肝予備能を定量的に評価している。
・DAR=PET画像の肝局所放射線濃度×calibration factor/投与放射能濃度/体重
・FVI=DAR×肝体積(㎝3)/体表面積(m2)

●参考文献
長谷川良人、消化器の検査のすべて~用語コラム30とケアポイント45付き~、秋季増刊、メディカ出版、1999