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黄疸はすべての新生児に認められるが、多くは生理的な範囲にとどまる。
しかし、一部は強度の黄疸のため脳へのビリルビンの沈着をきたし、核黄疸(最近はビリルビン脳症とも言う)による後障害を残す事がある。
このため治療を要する黄疸かどうか早期に把握し、適切な治療を行う必要がある。

病態生理
1ビリルビンの合成及び代謝経路
正常新生児は1日約0.5gのヘモグロビンが崩壊する。
このヘモグロビン1gは34mg.の間接(非抱合型)ビリルビンを産生する。
細網内皮系に取り込まれたヘムは、ビリベルジンを経て間接ビリルビンとなる。
これは水に溶けにくく、血中ではアルブミンと結合した状態で存在する。
肝内の小胞体へ肝細胞質内の担体蛋白の一つであるY蛋白によって運ばれ、グルクロンサン転化酵素によって直接(抱合型)ビリルビンとなり、胆汁中に排泄される。
更に腸管でウロビリノ-ゲンを経て便中へ排泄される。
血中でアルブミンと結合している間接ビリルビンに毒性はないが、アルブミンと結合していない遊離ビリルビン(アンバウンドビリルビン)が神経細胞への毒性を示す。
最近はこの遊離ビリルビンをベッドサイドで測定する事が可能になっている。

2新生児生理的黄疸の機序
成人赤血球の寿命は120日であるが、胎生期は85~90日と短く、このことが出生後のビリルビンの産生源として大きな因子となる。
袋瀬浮きにはビリルビンの縫合、処理は経胎盤的に行われ、母体血を介して母体の肝臓において解毒される。
このため出生後少なくとも数日間はビリルビン代謝が十分ではなく,黄疸が増強する。
とくに未熟児では、成熟児と比較し赤血球寿命は短く、またグルクロン酸抱合能も未熟であり、ビリルビンが相対的に高値となり、しかも遷延する傾向がある。

3新生児黄疸の推移と病的黄疸
正常では日齢2~3から肉眼的黄疸(総ビリルビン徝8㎎/㎗以上)が出現し、日齢4~5ごろピークとなり、12~13㎎㎗を示す。
以後漸減して日齢7~10ごろには肉眼的な黄疸は消失する。
次のような場合は、病的な黄疸と考え、検査や治療を必要とする。
   
経過時間 総ビリルビン値
24時間以内
24~48時間
48~72時間
72~96時間以降 10(㎎/dl)
12
15
18

〈新生児病的黄疸の診断〉
①出生24時間以内に黄疸の出現が肉眼的に認められる
②総ビリルビン値17㎎/㎗以上
③総ビリルビン値15㎎/㎗以下であるが黄疸が2週間以上に及ぶもの(遷延性黄疸)
④血清ビリルビン値が5㎎/㎗/24時間以上の上昇速度

黄疸の種類
1核黄疸(ビリルビン脳症)
黄疸が放置されると核黄疸をきたす。
書く黄疸を示唆する臨床症状は〈表1〉に分類されるとおりである。
核黄疸の初期症状である嗜眠傾向、哺乳力低下、活気の低下などの症状に注意する。

2早期黄疸
生後24時間以内に肉眼的に黄疸が認められる場合をいう。
このほとんどが新生児溶血性疾患(ABO、Rh式血液型不適合)によるもので、早期に検査、治療を開始する必要がある。

3遷延性黄疸
生後2週間以後も黄疸が見られる場合で、非閉塞性と閉塞性に分けられる。
非閉塞性の多くは未熟児での肝の未熟性による場合と、母乳栄養児に見られる母乳黄疸である。
母乳黄疸は、母乳中に含まれる女性ホルモンの一種であるプレグナンディオールが肝のグルクロン酸抱合を抑制するためとされてきたが、最近では母乳中のリポプロテインリパーゼが高く、このため母乳はNEFA(遊離脂肪酸)に富むようになり、この母乳を摂取すると肝でのビリルビンの取り込みや抱合が障害される結果、黄疸が遷延するという説が有力視されている。
母乳を注視する必要はないが、他の病的な黄疸との鑑別が必要なときは、2~3日間母乳を中止し、人工乳とする。
これによって母乳黄疸ならば急速に黄疸は軽減する。

4閉塞性黄疸
直接ビリルビン値が3㎎/㎗以上の場合は閉塞性黄疸を疑う。
肝で抱合されたビリルビンの排泄機転の障害で起こり、濃縮胆汁症候群、肝炎、胆道閉鎖症等を考慮するが、原因がはっきりしない肝機能障害が原因なことも多い。

治療
1光線療法
光を当てる事により、皮膚近くのビリルビンが酸化されやすい状態となり、酸素と反応して光酸化反応を起こし、ビリルビンはフォトビリルビンとなり胆汁中へ排泄される。
光線療法の作用機序はこのような光酸化作用によるものと考えられてきたが、最近は光異性体化作用が主であり、これによるビリルビン構造の変化、すなわち水に解けやすい形に変わることで胆汁中に排泄されるということがわかってきている。
黄疸の原因、日齢、出生体重、核黄疸増強因子の有無等を考慮し、総ビリルビン値から治療開始基準が定められている。
基準値より2~3低下したとき光線療法の中止の目安とする。

2交換輸血
核黄疸のリスクが高い場合、交換輸血が必要となる。
循環血液量の2倍量を入れ替える事で約85%の血液量が交換される。
使用する血液はRh不適合の場合はRh(-)でABO同血型を、ABO不適合による場合はO型血または合成血を使用する。
原則的に臍帯静脈を使用し、輸血を繰り返す方法(ダイヤモンド法)がとられるが、小さな児や呼吸障害がある場合は、血行動態の大きな変動を避ける目的で、末梢の動脈、静脈を使用し同時に輸血を行う。

看護

1看護の目的
①出生前、出生時またはその後の経過でリスクのある母親と新生児を確認する。
②高ビリルビン血症の初期症状を認識し、治療中のケア及び予防的処置を提供する。
③後障害(核黄疸)を予防する。

2 アセスメントのポイント
a出生前の確認事項
次の条件を持つ母親から生まれる新生児に黄疸が見られる。
①Rh不適合
②ABO不適合
③妊娠中の感染症
④投薬施行(サルファ剤など)
⑤母体糖尿病あるいは疾病を持つ同胞(肝疾患,代謝異常,新生児黄疸)

b分娩中の確認事項
①早産
②前期破水
③オキシトシン誘発分娩
④吸引分娩(頭血腫)

cリスクのある新生児の確認(母体側因子に加えて)
①仮死(低酸素症)
②アシドーシス
③新生児敗血症
④ビリルビンと結合部位を拮抗する薬剤の投与
⑤大きな頭血腫(閉鎖性出血、赤血球崩壊)
⑥胎便排出の遅れあるいは便回数の減少
⑦SGA
⑧早産
⑨蒼白(貧血)
⑩点状出血(子宮内感染症)
⑪小頭症(子宮内感染症)

d黄疸の発見時期と程度に注意する
黄疸の発見時期は、生理的か病的かの鑑別に重要である。
特に溶血性疾患では、生後24時間以内に黄疸が現れ急速に強くなる

e核黄疸の初期症状に注意する
成熟時と未熟児では、観察点が異なる。
いずれも核黄疸の初期症状煮を予知する事が大切であり、発症が予知されたらただちに交換輸血が行われる。
未熟児の症状
成熟時のように神経症状を呈する事は少なく、チアノーゼ、呻吟、呼呼吸数減少等の呼吸障害の症状あるいは吐血、出血傾向等が先行するので他の疾患と間違いやすい。
同時に低体温、低血糖、出血、低蛋白血症、四肢や眼瞼の浮腫の観察も大切である。

f貧血症状に注意する
低酸素血症(動脈血酸素分圧50mmHg以下)以外の皮膚粘膜の蒼白、腹部膨満(肝脾腫)の有無、四肢の動き、啼泣力、活気等を観察する。

g便と尿の性状に注意する
生後2~3週間経っても消失しない黄疸(遷延性黄疸)では、無胆汁便とビリルビン尿のチェックが大切である。

3看護の実際
a検査時の看護
イクテロメーターによる測定
黄疸の強さを肉眼的に客観的に判定する方法として、イクテロメーターによる測定方法がある。
イクテロメーターを鼻尖に押し当てて比色し、鼻尖の皮膚の黄色の程度を数字で表す。
鼻尖の血色が去って黄色がはっきり現れるようイクテロメーターを強く押し当てる。
測定は自然光線下で行う。
測定時間を決めて毎日経過を追う事が重要である。
貧血のある児は。
実際より強く、多血児は薄く現れるので注意を要する。
皮膚黄染は、血中ビリルビン値上昇よりやや遅れて出現する事を知っておかなければいけない。
イクテロメーターで3.5以上になれば医師に報告する。
皮膚黄染の進行部位も血清ビリルビン値と関係があると言われているので、イクテロメーター値と合わせて観察する。
とくにイクテロメーター3.5以上であれば、裸にして手や足先まで十分に観察する事が重症黄疸の早期発見に役立つものである。

b治療に伴う看護
新生児高ビリルビン血症の看護のほとんどは、ビリルビンレベルを下げ、溶血過程を逆行させるための治療に関連したものである。
通常行われる治療として光線療法と交換輸血がある。
1)光線療法施行時の看護
①光線療法前に保育器の温度、湿度を点検し、患児の体温の測定を行う。
②光線療法のユニットは、患児との距離が40~50cm.となるようにセットする。
③患児は裸にし、網膜に対する光による障害を防ぐ目的でアイマスクを使用する
(閉眼している事を確認してから覆う)また仰臥位時には性器保護も行う。
アイマスクは8時間ごとにはずして、眼清拭を行い、眼脂の有無、角膜や眼球を観察する。
アイマスクは1日1回交換するが、眼脂がある場合は適宜交換する。
皮膚の弱い児には、アイマスクの粘着部を取り除き、非刺激性絆創膏で固定する。
アイマスクによる鼻空圧迫の有無も観察する。

④体位変換は2~3時間ごとに計画的に行い、腹臥位にできる患児には背部にも照射する。
⑤体温は1~2時間ごとに測定し、適温を保持する。
コット収容児は、コット内に寒暖計を置いて環境温を測定する。
⑥皮膚を保護し、保清に努める。
下痢便や発疹が現れる事があるので、清拭し皮膚を清潔に保つようにする。
⑦照射中は次の観察を行う
黄疸の程度、皮膚色、活気、哺乳状態、モロー反射、チアノーゼの有無、皮膚の乾燥、発汗の状態、出血傾向、発疹、尿便の量・性状、水分バランス、光線療法の合併症であるブロンズベビー(皮膚が暗緑褐色を呈する)等。
⑧光線療法中は、チアノーゼが観察しにくい、敗血症の診断が不明確になる等の問題があるので全身状態に注意する。
⑨血清ビリルビン値は低下しなくても、肉眼的に黄疸が軽減する場合があり、イクテロメーターによる黄疸の判定は信頼性を欠くので、光線療法の効果は、血清ビリルビン値により判断する。
⑩記録を行う
光線の照射時間(照射開始時間、休止時、終了時間)、照射量、バイタルサイン、照射中の観察事項等
⑪副作用の有無の観察

光線療法時の副作用
1.ヒトの新生児で実際に経験された副作用
①発熱
②一過性の発疹
③緑色軟便
④尿の黄色調増強
⑤不感蒸泄の増加
⑥皮膚、血清、尿の暗灰褐色着色と貧血(ブロンズ・ベビー)
⑦黄疸、チアノーゼを見にくくする
⑧敗血症の診断を困難にする

2.一時唱えられたが現在否定的となったもの
①成長の遅延
②血清アルブミンのビリルビン結合能低下
③溶血の促進

3.可能性として
①網膜に対する障害
②ビリルビン以外の体物質の破壊
③性成熟年齢への影響
④生理の昼夜リズムへの影響
⑤(少量ではあるが)特殊線放射による影響
⑥治療灯装置からの電流の漏れ

留意点
・母親や家族が不安を生じさせないように事前の説明を十分に行う。
・面会時には中断し、アイマスクをはずして抱いてもらうなど母親の接触の妨げとならないようにする。

2)交換輸血時のケア
<交換輸血前>
①交換輸血の術式は、数種類のものがあるが、医師が選択した術式に応じた必要物品を準備。
②患児の準備を行う
患児を裸にし、身体を固定した後、体温、呼吸、心拍、血圧等をモニタリングできるように電極などを準備する。
③患児に適合した血液を準備し、医師と共に確認する。

<交換輸血中>
①バイタルサインのチェック(TRP、血圧)を行う。
②患児の状態(皮膚色、呼吸の状態、体温の変動、低血糖、痙攣、尿量の減少、溶血)、
交換輸血反応の徴候(遅脈、不整脈、心停止、心不全等)に注意する。
③交換輸血中は、最適な体温を保つようにする。
④輸血量、輸血中の投薬内容、バイタルサインの記録を行う。

<交換輸血後>
①バイタルサインのチェックおよび患児の一般状態の観察を行う。
②交換輸血部位からの出血に注意するとともに、感染を起こさないように清潔に保つ。
③高ビルルビン血症が再増強して起こる事があるので、ビリルビン値や血清カルシウム、カリウムおよびナトリウム値等を把握しておく。
 
c家族への援助・指導
家族への援助・指導におけり看護の目標は、精神面での支えとなる事である。
高ビリルビン血症、光線療法、交換輸血の必要性等については、医師が説明を行うが、両親がすすんで質問できるように配慮し、適切な情報を提供する。
また、光線療法中は、目を覆う理由を説明すると伴に両親が患児を訪れることを妨げないようにする。
さらに両親が面会中は、光源を消してアイマスクをとりはずし、患児を抱いたり、授乳できるように配慮するとともに親たちを力づける。

参考文献
今津ひとみ「母性看護学 2.産褥・新生児」医歯薬出版株式会社
森 恵美 「系統看護学講座 専門25