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1、病態
肺がんは、吸入性刺激物による絶え間ない組織障害の結果、起こる。
刺激物には、タバコや大気汚染物質、ヒ素、アスベスト、ニッケル、ラドンなどがある。
肺がんは、気管支粘膜上から発生する。
正常な肺の構造は、上皮細胞が気道の内面を覆い、そのほか組織を保護しているが、前述のような刺激物が刺激し、上皮細胞に持続的な脱落と再生を促し、細胞に染色体変化や異形成を生じさせると言われている。

異形成を起こした上皮細胞は保護上皮としての機能を果たさなくなり、上皮下の組織は刺激物や発ガン物質に触れるようになり、結局がん細胞に変化し、組織への浸潤を開始する。気管支粘膜上皮は、さまざまな細胞への分化能を持っているため、表1のような組織型の肺がんとなる。

<表1>

腺癌は、肺胞、気管支上皮を置き換えるように進展した結果起こるので、腫瘍内に空気を含み、胸部X線上で淡い陰影として観察されたり、腫瘍から放射線状に棘状の線上陰影が伸びるのが見られることもある。
腺癌の特殊型としては、細気管支肺胞上皮ガンがあり、末梢気道に生じ、気管支、肺胞壁を這うように増殖し、経気道的に散布し、全肺へ広がる。
患者は、大量の喀痰を喀出する上、進行が早く、化学療法がほとんど効かない予後不良の組織型と言われている。
扁平上皮ガンは、太い気管支に発生する中枢型が多く、腫瘍を形成しやすい。
その結果、気管支内腔の狭窄や閉塞による無気肺をきたす。
また、大きくなった腫瘍の中心部はしばしば壊死を起こし、空洞を形成する。
大細胞ガンは、末梢型(区域気管支の末梢側に存在する)が多く、周囲に圧排性に増殖して巨大腫瘍を形成する。
この腫瘍もきわめて速く増殖する。
小細胞ガンは、腫瘍の増殖速度が速く、肺門縦隔リンパ節転移、遠隔転移を生じやすく、化学療法や放射線療法に対する感受性が高いなど、ほかの組織型とまったく異なる。肺がんの中でも、最も生存率が低いことが特徴である。

2、原因・増悪の誘因
肺がん発生には、喫煙が深く関わっている。
喫煙指数=1日に吸う本数×年数
この喫煙指数が400、すなわち喫煙本数が14万本を越えると、肺ガンの罹患率が上昇するとされている。
喫煙者のみならず、受動喫煙の問題も重要で、1日20本以上の喫煙者の配偶者は肺ガン死亡率が2倍になるという報告や、受動喫煙の影響は配偶者よりも子どものほうが強く現れるというデータも示されている。

3、症状
表1に示すような組織型に応じた特有な症状を呈する。腫瘍の進展別に大別するなら表2のように示される。
このほか、腫瘍随伴症候群がある。ガン細胞自体が分泌する生理活性物質による内分泌異常、腫瘍が原因となった自己抗体の出現など、腫瘍浸潤以外の原因で起こる症状で主に以下のようなものがある。
①手指末端が太鼓ばち状に肥大するばち指は、肺ガンをはじめ慢性末梢循環不全をきたす慢性心肺疾患で起こる。
②イートン‐ランバート症候群は筋無力症候群ともいわれる。下肢帯筋の筋力低下を主症状とし、小細胞ガンで起こることが多い疾患である。
③腫瘍からホルモンをはじめとする生理活性物質産生物質が産生され、クッシング症候群や抗利尿ホルモン不適合分泌症候群、高カルシウム血症、腫瘍熱を呈する。
※詳しくは、表3を参照

<表2>

4、検査・診断
①胸部単純X線検査
これは、容易に施行でき、集団検診にも用いられる。
孤立性腫瘤影、無気肺による肺野の縮小、胸水、縦隔陰影の拡大などが肺ガンの存在を疑う所見である。

②喀痰細胞診
喀痰は気道分泌物とともに肺末梢から中枢気道で剥離した細胞を含む。非浸襲的で質の高い診断が得られる。
喀痰中の多数の細胞の中から異常な細胞をチェックする。
肺ガン検診では、50歳以上で喫煙指数600以上の場合、扁平上皮ガンの高危険群として喀痰細胞診が行われ、なかにはX線検査で無所見の肺ガンを早期発見できる場合もある。

③胸部CT検査
胸部X線検査で異常を認めた場合など、より詳細な画像を得るために行う。
腫瘍の性状、局在、周囲臓器との関係、肺内微小病変の検出、縦隔リンパ節腫脹などの情報が得られる。

④気管支鏡検査
画像で認めた病変部の質的検査には欠かせない検査である。
気管・気管支内腔の変化、直視下生検・擦過、経気管支肺生検、気管支肺胞洗浄などにより、病巣の細胞を直接得ることができる。
侵襲性が高いため、頻回の施行は困難である。

⑤CTガイド下経皮肺生検
CT撮影をしながら体表から生検針を刺入し、病変部の細胞を得る。病変部が気管支鏡、下で到達できない部位にある場合や、X線透視下で腫瘤を同定できない場合などが適応となる。

正常肺野を刺すために、検査後に気胸を合併する危険性が高いという欠点がある。
⑥腫瘍マーカー
血液中の各腫瘍細胞に特有の物質を検出する。診断頻度は高くないが、治療後の測定値の上昇が再発、転移を反映することがある。
腺ガンには、ガン胎児性抗原(CEA)、扁平上皮ガンには、SCC抗原、小細胞ガンには、ニューロン特異的エノル酵素(NSE)、SLeXなどが使用され、またProGRF、CIFRAなども用いられる。
⑥遠隔転移検索
遠隔転移のある症例には、手術適応ではない。
治療法選択のために、肺ガン転移の好発部位である脳・骨・肝臓を中心に画像的に検索を行う。