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1、目的
●気道の確保、酸素投与、気道内分泌物吸引のために施行される。

2、適応
●咽頭より上の気道に障害(外傷、炎症、浮腫、反回神経麻痺など)があり、気道に狭窄や閉塞をきたした場合
●気道内分泌物が多量で、自力で喀出で着ないために頻回な吸引を必要とする場合
●1週間以上の長期的な人工呼吸が必要と判断される場合
●気管内挿管中、チューブによる声門浮腫や狭窄が出現したが、さらに気道確保を必要とする場合

3、気管切開部位
●気管は甲状軟骨、輪状軟骨に続く気管軟骨と輪状の靭帯で形成され、10~12㎝の長さがある
●第2、第3気管輪で縦または横に皮切を加え、筋膜、胸骨舌骨筋を剥離して甲状腺峡部、気管軟骨を露出する
●気管の第2、第3軟骨の前壁に切開を加え、気管切開用のカニューレを挿入する

4、気管切開チューブ(気管カニューレ)の種類
●気管切開チューブは開口部から挿入しやすい角度に彎曲したチューブ(10㎝前後)と固定用の鍔(つば)からなる
●材質はシリコン、ポリエチレン、塩化ビニールで、適度の柔軟性、分泌物を付着させない、刺激を少なくするために添加物に工夫がされている
●スピーキング型カニューレを用いることにより発声ができ会話が可能となることもある

5、留意点
●実施中、実施後の重篤な合併症に注意が必要である
●切開術による出血や分泌物の流入防止、およびカフ圧の調整をする
●気管切開施行中は清潔操作につとめ、切開チューブ挿入中も感染防止のため局部の消毒を行う
●気管切開チューブの挿入が長期に及ぶため、本人、家族への十分な説明、理解を必要とする。
特に会話が可能となることを伝え、コミュニケーション(筆談、指文字、口の動きなど)の方法を説明する

6、必要物品
●気管切開セット一式(ディスポーザブルメス、糸を含む)
●気管カニューレ(指示のサイズの前後および予備も準備する)
●切り込みガーゼ、綿テープ
●カフ用注射器(5~10ml)、5%キシロカインゼリー
●滅菌手袋
●滅菌四角布、穴あき四角布
●局所麻酔(0.5~1%塩酸プロカイン)
●注射器(5・10・20ml)
●注射針(18G、23G)
●消毒液(イソジン)
●肩枕
●照明
●吸引用一式(気管用、口腔用)、酸素一式

7、実施と介助の基本的手技
●緊急事態でなければ事前に気管挿管を行ったうえで施行する。
●医師から本人・家族へ現在の状態、気管切開の必要性、方法などについて説明する。

1)必要物品の準備
●気管切開セットが広げられる台を準備する。術者が使いやすい位置に気管切開セットを置き、無菌的に開く。
●確実な動作ができるように確認しておく。
●照明をセットする。

2)患者の準備
●ベッドを水平にし患者を仰臥位にする。
●肩甲骨の下に肩枕を入れ、頭と頸部を十分に伸展させる。
●意識レベルや理解力が低下し体動のある患者は上肢や四肢を抑制する場合もある。
●布で顔が覆われるので頻回に声をかける患者の不安を軽減する。

3)気管切開の実施
●医師はイソジンで皮膚消毒後、清潔シーツで覆う。局所麻酔をする。
●医師は、第2、第3気管輪部で皮切を加え、筋膜、胸骨舌骨筋を剥離して甲状腺峡部、気管軟膜を露出する。
●切開には縦切開と横切開がある。
①縦切開 : 最小限の剥離で気管に早く到達でき広範囲の気管を露出できる。
②横切開 : ほとんど瘢痕を残さない利点を有するが、時間がかかり緊急時には適当ではない。
●医師は、甲状腺峡部を上方に圧排するか、あるいは離断して露出した気管の第2または第3軟骨の前壁に切開を加える(長さは成人で1.5㎝必要である)。
●医師は、切開部を持ち上げながらキシロカインゼリーを塗った気管切開用気管内チューブ(気管カニューレ)を挿入し、5mlの注射器でカフに空気を注入しューブを固定する。切開部の縫合(1~2針)をする。切開部の消毒をする。
●実施中、患者には常に状況を説明する。
●血液や分泌物を取り除くため口腔・気管内の吸引をする。
●ガーゼ2~3枚にY字型の切り込みをいれカニューレをはさみこむようにして当てる。
●カニューレの鍔に両側の綿テープを通し、指が2本入る程度の余裕を持たせ(挿入直後はやや強めに結ぶ)、側部で結ぶ。切開周囲、綿テープが当たる周囲の皮膚の観察を今後も続ける。
⇒ 咳嗽反射による抜去を防ぐため。また、気管切開後1時間ほどは瘻孔の形成が不十分なためチューブが抜けやすいので注意する。
●患者の状態を観察し、変化があればすぐに報告する。
(観察:バイタルサイン、SaO2、チアノーゼ、四肢冷汗、痛み、出血量など)
●実施中・後は出血、気胸、皮下気腫、誤嚥性肺炎を合併していないか観察する。
●患者の頸部を清拭し、患者の身支度を整え楽な体位をとらせる。
●後片付けをする。
●記録・報告をする。

8、管理上の注意
1)気管切開チューブの交換時期
●カフ付きチューブ:1回/週
●カフなしチューブ:外筒は10日に1回交換し、内筒は1日2~3回洗浄し消毒する。ディスポーザブルの内筒の場合は汚染の程度により2~3日使用後破棄する。

2)カフの管理
●必要最低限のカフ圧にする。
①下付圧が低い:チューブと気管壁の間に隙間ができ、十分な換気を得ることができない。
分泌物が気管内に流出するため肺炎などの合併症が生じる。
②カフ圧が高い:気道粘膜循環障害を起こす。
●適切なカフ圧:カフ圧用チェンバーを手で触れ、耳たぶくらいの柔らかさで20mmHg以下。
●エア漏れの有無をチェックする。
●2時間おきぐらいでカフのエア交換を行い、気道粘膜の循環改善を行う。
●口腔内を定期的に吸引し誤嚥を防ぐ。

3)気道内の加湿(人工呼吸器離脱後)
●室内の湿度を60%に保つ。
●超音波ネブライザーを接続し、定期的に吸引する。
●気管カニューレ保護マスクを装着し外気に直接触れないようにする。
人口鼻(気管切開チューブに直接取り付け患者自身の呼気で加温・加湿)を装着することもある。