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(1)慢性閉塞性肺疾患
定義
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は有毒な粒子やガスの吸引lによって生じた肺の炎症に起因する進行性の気流制限を呈する疾患である。
この気流制限は様々な程度の可逆性を認める。
気流制限を呈する病変は比較的太い気道から末梢気道、さらに肺胞領域のすべての領域にわたって発生するが、主として気道病変を認める気道病変優位型と、主として肺胞系の破壊による気腫化を認める気腫優位型のものがある。
緩徐に経過し、労作時の呼吸困難(息切れ)、慢性のせきやたんで発症することが多い。

原因
原因には喫煙、大気汚染などの外因性危険因子と患者側の内因性危険因子がある。
喫煙は外因性危険因子の代表であり、COPDの最も重要な原因因子であるが、COPDを発症するのは喫煙者の約15%とされている(つまり喫煙しても約85%は発症しない)。
これは、喫煙の影響を受けやすい人とそうではない人がいる(遺伝的な要素がかかわる)ことを示唆している。
この個人差を規定するものは内因性危険因子と考えられる。遺伝性疾患であるα₁-アンチトリプシン欠損症ではCOPDを発症しやすく内因性危険因子と考えられるが、日本人には非常にまれである。
外因性危険因子としては、喫煙のはかに職業上の粉塵や化学物質、受動喫煙、感染症などがあげられる。
喫煙者だけではなく、直接喫煙をしなくても副流煙を吸入する受動喫煙による影響も重要である。

病態
気道や肺胞領域における炎症に起因する病理学的変化が気流制限をつくる。
①中枢気道
気道、気管支を含め内径が2~4mm以上の細気管支領域をさす。
これらの気道には炎症細胞が浸潤しており、線維化や平滑筋の肥厚などがみられ、気流制限の原因になると考えられる。

②末梢気道
内径2mm以下の細気道をさす。これらの気道には粘膜が貯留し、ゴブレット細胞の形成や扁平上皮化成、炎症細胞の浸潤、線維化、平滑筋の肥厚、などの変化がみとめられる。
慢性的な気道炎症により気道の壁の損傷と修復とがくり返され、気道壁の構造が変化して管腔が狭くなり、気流制限を起こす。
炎症細胞浸潤は病期の進行に伴って軽減する。

③肺胞領域
酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するガス交換が行われる部位である。
「終末細気管支より末梢の気腔がそれを構成する壁の破壊を伴いながら非可逆的に拡大した肺で明らかな線維化をみとめない」と定義された気腫性変化をみとめる。
健常な肺を目が細かくつまっている新品のスポンジにたとえるとすれば、肺気腫の肺は、使い込んで目が粗くなりすかすかになったスポンジにたとえることができる。
肺胞壁破壊により肺が過剰にやわらかくなる(コンプライアンスの上昇)のために肺の縮む力(弾性収縮力)が低下し、呼気を強くふき出す力が低下する。
さらに気管支は肺胞壁によって支えられているため、肺胞壁が破壊されると気管支がつぶれやすくなることも十分に息をはきだせない原因となる。
これらの機序により肺の縮む力が低下し、気管支閉塞により呼気時に(とくに強く息をはいて肺胞内圧が高くなる場合)気流が制限されることになり、息を吐ききった状態でも多くの空気が肺の中に残り、膨張した状態(肺の過膨張)になる。
そのため、肋骨や筋肉、横隔膜で囲まれた限られた胸郭のなかにつねに余分に空気がたまってふくらんだ肺がはいっている状態になる。
十分に息を吐ききらない状態で次の吸気を始める呼吸をくり返すと、COPDの患者の呼吸困難を実感できる。

1秒量の経年的変化を示している。通常1秒量は25歳ころに最大量に達し、その後は年に約30mlずつ減少していくが、生存中には呼吸困難を自覚することはない。
しかし喫煙者のなかにこの減少が著しく、1年間で約60~100mlに達するものがいる。
この減少が続くとやがて労作時の息切れを自覚するようになり、1秒量が1200mlまで到達すると労作時の息切れを実感するようになり、800ml前後にまで減少したところには呼吸機能の低下のために日常生活を送ることも困難になる。
一般に、気道上皮細胞の線毛機能不全、気流制限、肺の過膨張、ガス交換異常、肺高血圧症、肺性心へと進行する。

臨床症状・身体所見
多くは喫煙者や喫煙歴を有し、労作時の呼吸困難と慢性のせき、喀たんがおもな症状である。
息切れの程度を表す指標として世界的にはMRCスケールが使用されている。

心疾患や膠原病、脳血管障害の後遺症などにより活動が制限されている場合は、労作がかからないために呼吸困難、息切れが生じないことがあるので注意する。
典型的な理学的所見をみとめる場合には、かなり症状が進行していることを示す。
進行例では、胸郭の前後直径が増大しビール樽様になり、肺の内圧をたかめ気道の虚脱を防ぎながら息をゆっくり吐く口すぼめ呼吸がみられる。
また呼吸運動に重要な横隔膜が過膨張した肺で押し下げられてうまく機能しないために、頸部に呼吸補助筋である胸鎖乳突筋の肥厚や胸郭の奇異性運動(フーバー徴候)をみとめる。
COPDの呼吸困難の原因の1つとして、運動時などに呼吸回数がふえると十分に息が吸えないことがあげられる。
COPDは進行すると低酸素血症を示すようになり、右心不全に陥る。右心不全では経静脈の怒張や下肢の浮腫を呈する。
*フーバー徴候:慢性肺気腫などで、横隔膜の動きが制限されているときに呼吸補助筋で呼吸運動を行おうとするもので、吸気時に下部肋間部胸腔側、つまり内側へ陥没することである。

画像検査
軽症のCOPDを発見するには、胸部X線検査では感度・特異度ともにあまり良好ではない。
気腫優位型では、横隔膜の平坦化や肺の過膨張所見、血管陰影の減少、肋間腔の拡大などの所見をみとめる。
胸部CT写真では気腫化した部位が明瞭に描出される。
気道病変優位型では、胸部X線検査では特徴的な所見を呈さない場合もある。

呼吸機能検査
COPDの特徴である気流制限の指標である閉塞性換気障害を最も鋭敏かつ簡便に検出できる検査はスパイロメーターである。
気管支拡張薬投与後における1秒率が70%未満の場合を閉塞性換気障害ありと判断する。
重症度には性別、年齢および身長から予測される1秒量に対して気管支拡張薬を用いた状態でスパイロメーターにより実測された1秒量の割合(気管支拡張薬使用下での1秒量実測値/予測1秒量)を用いる。
この割合が低下するほど重症であることを示す。
また十分に息を吐ききれないために空気が肺の中に残るので、残気量が増加する。
フローボリューム曲線では、呼気時に気流制限をうけるため気流速度の低下が記録される。また肺胞領域の破壊が進むと、一酸化炭素拡散能が低下する。

<慢性閉塞性肺疾患の治療と看護>
禁煙
禁煙はCOPD発症のリスクを低下させその進行を停止させる唯一の、最も効果的かつ経済的な方法である。
喫煙をニコチン依存症という疾患と考えて、禁煙をCOPD患者の治療法と認識することが重要である。
COPD患者の場合、喫煙を続けていると1秒量は60~150ml/年ずつ低下するのに対し、禁煙すれば1秒量低下率は20~30ml/年まで抑制できる。
また、気道分泌が多い例では、禁煙のみで喀たんの減少をみとめることが多い。
禁煙に匹敵する薬物療法はないので、禁煙指導を徹底する。
喫煙は嗜好品ではなく依存性薬物ということを患者にも理解してもらう。
喫煙に伴う慢性のせき、喀たん、息切れが決してささいな症状ではないことを認識させることが重要である。
途中で失敗しても禁煙を繰り返しすすめる。ニコチン離脱症状は1~2週で軽減~消失することを伝え、禁煙を継続しやすい環境をつくりだす方法を指導し(行動療法)、必要に応じてニコチン補充療法(ガム、経皮パッチ)を利用する。

薬物療法
呼吸機能の低下を改善する薬物療法はない。
しかし、症状を軽減し、運動耐容能を改善して生活の質を高めるので、重症度に応じ積極的に実施することが望ましい。
症状の改善効果を期待できる薬剤として、気管支拡張薬であるβ₂刺激薬、抗コリン薬、キサンチン製剤がある。
一般的にCOPDに対する気管支拡張作用が強く、長時間使用しても有効性が低下しにくい吸入抗コリン薬が使用される。
しかし、それぞれの薬剤に対する反応性には個人差があるので個々の症例に合せて、副作用も考慮しながら単剤あるいは組み合わせて用いる。
吸入ステロイド薬はCOPDの気流制限の進展を抑制する作用はないとされているが、重症例には考慮する。

気道の清浄化
喀たんの多い例では、先記の気管支拡張薬に加えて、水分補給、吸入療法、体位ドレナージなどを行い喀たんの排出を促す。

感冒予防
感冒予防のためにうがいを励行する。
インフルエンザワクチンはCOPDの死亡率を減少させるので、毎年ワクチンの接種をすすめる。肺炎球菌ワクチンの接種も考慮する。

在宅酸素療法
低酸素血症は肺血管を収縮させるために肺動脈圧を上昇させ右室系への負荷が高まり、肺性心、右心不全の原因となる。
酸素療法により肺高血圧・肺性心の発生・進行阻止効果が期待させる。
現在、低酸素血症を伴うCOPDの生命予後を改善することが確認されている唯一の方法が、1日15時間以上酸素を吸入する長期在宅酸素療法である。
PaO₂が55mmHg以下、あるいは55~60mmHgでも睡眠時・運動時の低酸素血症をきたす症例では在宅酸素療法の適応となる。

包括的呼吸リハビリテーション
禁煙と薬物療法以外の非薬物療法の中心をなす。
運動耐用能の改善を目的として、多種専門職種が協力して患者教育(疾患の理解、禁煙、薬物療法の意義とアドヒアランスの保持、ワクチン接種による感染予防、心理的支援)、栄養指導(栄養状態の悪化は気流制限とは独立した予後規定因子であり、理想体重の90%以下では栄養障害が存在すると判断する)、呼吸理学療法、運動療法を含めた包括的な呼吸リハビリテーションを行う。
運動療法として下肢の持久力トレーニングは、運動耐用能の改善に有効である。
歩行(散歩)は性別、年齢をとわず最もなじみやすい運動療法である。負荷が強いほど効果も期待されるが、継続が重要であり、病状にあった方法を選ぶことが重要である。

肺容量縮小術
十分な内科的治療を行っても呼吸困難が持続する重症の肺気腫患者には、機能しなくなった気腫性病変を外科的に切除する肺容量縮小術が行われることがある。術後3年程度は肺機能改善効果がみられるが、確立された治療法ではない。

急性増悪
COPDでは感染、大気汚染物質の吸入などにより呼吸器症状が急に増悪することがある。
酸素投与をおこなうが、COPD患者は慢性的な高二酸化炭素血症のため、CO₂ナルコーシスをきたす危険性があるので、低流量(鼻腔カニューレで0.5~1.0l/分)の酸素投与から始める。
薬物治療として気管支拡張薬、とくに短時間作用型のβ₂刺激薬の吸入が効果的である。
また、ステロイドの短期療法は急性増悪からの回復をはやめることが知られている。
濃性の喀たんをみとめる場合には感染症の合併を考慮し、抗性物質の併用を行う。
右心不全を伴っている場合には、利尿薬を用いる。
以前なら経口挿管を要するような呼吸不全に対して、非侵襲的な人工呼吸を行うことが可能になり、適応条件を満たす場合には試みる。

予後
予後に関与する因子として、年齢、喫煙の継続、気道閉塞の程度などがあるが、1秒量はCOPDの予後を予測するのによい指標となる。
1秒量が1lでは5年生存率は約50%となる。

慢性閉塞性肺疾患患者の看護
1、アセスメント
既往歴
①喫煙歴、②気道刺激物の吸入歴、③感染・アレルギーなどの既往歴、④呼吸器疾患の家族歴、⑤代謝性疾患の有無

呼吸状態
①頻回で持続するせき、②せきに伴う起床時から午前中に多い粘性のたん、③労作時の呼吸困難、④頻呼吸、⑤補助呼吸筋を使用した呼吸、⑥口すぼめ呼吸、⑦鼻翼呼吸、⑧呼吸音の減弱、⑨呼気延長、⑩喘鳴、⑪副雑音

全身状態
低酸素血症(あるいは高二酸化炭素血症)による以下の症状の有無と程度についてアセスメントする。
①チアノーゼ、②傾眠・記憶障害・興奮・混乱・昏睡、③落ち着きのなさ、④頻脈、⑤心房性不整脈(期外収縮、心房細動)、⑥心電図異常(右心負荷を反映した肺性P波、右軸偏位、不完全右脚ブロック)、⑦浮腫、頸静脈怒張、肝腫大、⑧倦怠感、⑨食欲不振、⑩体重減少、⑪便秘

検査所見
①呼吸機能検査で、閉塞性換気障害(1秒率の低下・1秒量の減少、フローボリューム曲線の下降脚の急激な下降、肺活量の低下)、残気率の上昇・機能的残気量の増加、②動脈血ガス分析で低酸素血症、高二酸化炭素血症、③胸部X線検査で肺野の透過性亢進、横隔膜の低位・平坦化、心胸郭比(CTR)の減少、④胸部CTでの肺気腫病変

その他
①生活環境(大気汚染の有無、住居構造)、②薬物の使用状況、③酸素の使用歴、呼吸補助器具の使用歴、④病気に対する受け止め、⑤社会的役割、⑥発達課題の達成度、⑦セルフケアレベル、⑧サポートシステム

2、看護活動
■急性増悪時の看護
COPDの急性増悪時は、安定した状態がなんらかの原因で急激に呼吸機能が低下し、多くは動脈血ガス分析値の急激な悪化をみとめる。
患者には、強い呼吸困難と生命への危機感(死への恐怖)がある。
看護師はすみやかに患者の気道浄化につとめ、換気を改善し不安を緩和することに焦点をあてて援助する。

気道の清浄化:粘液の分泌過多による分泌物を除去する。
①たん・気道内分泌物の位置と性状、呼吸状態についてアセスメントする。
②動脈血ガス分析値、SaO₂をモニタする。
③効果的な咳嗽方法について指導し、実践する。
同時に吸引を行い、気管および気管支の清浄化をはかる。
必要に応じて気管支鏡下で吸引をおこなうため、患者の苦痛を緩和する援助を行う。
④用手的呼吸介助などによって排痰をうながす。
⑤分泌物の粘調度を下げ喀出を容易にするため、心機能に問題がないことを確認し十分な水分補給を行う。
⑥せきの後は、口腔ケアを行う。
⑦気管支刺激物質および刺激となる因子(花粉やほこりなど)を除去するため、病室環境を整える。

換気:呼吸筋の疲労または慢性的な気流制限による換気の低下を改善する。
①呼吸数、呼吸音、呼吸補助筋の動き、呼吸パターン、皮膚や口唇の状態についてアセスメントする。
②動脈血ガス分析値、SaO₂をモニタする。
③安楽に呼吸できる体位(ファーラー位またはセミファーラー位)にする。
④腹式呼吸(横隔膜呼吸)、口すぼめ呼吸を指導する。P251
⑤病室環境を整え、気管支刺激物質および刺激となる因子(花粉やほこり、空調のエアフィルタのよごれなど)を除去し、室内空気を清浄に保つ。
⑥腹部膨満による横隔膜の挙上や、胸郭の拡張が抑制されることによる呼吸への悪影響を防ぐために、ガスを発生する食品は避けるように指導する。

ガス交換:肺胞でのガス交換効率を改善する。
①低酸素血症による症状、呼吸状態、皮膚や粘膜の状態をアセスメントする。
②動脈血ガス分析値、SaO₂、酸塩基平衡、電解質、心電図をモニタする。
③気管および気管支の清浄化をはかる。
④必要な酸素療法を行っても症状が改善しない場合は、医師の指示により換気補助療法を行う。
その際は、指示された設定条件であるか、作動状態に問題はないかを確認する。

感染:急性増悪の誘因の1つに気道感染がある。発熱は、酸素需用を増加させ心身を消耗させる。そのため新たな感染を予防し、感染をみとめる場合には早期に症状の改善をはかる。
①感染徴候、呼吸・循環動態(血圧、脈拍数・リズム、頸動脈怒張、尿量)、体液バランス、栄養状態をアセスメントする。
②指示された酸素療法、抗菌薬を実施する。
③侵襲的な処置の際には無菌操作を行う。
④清潔な口腔状態を維持する。

不安:COPDの急性増悪時には、呼吸困難のために強い不安をいだいていることが多い。
また、低酸素血症・高二酸化炭素血症のため不安定な精神状態を示すことがある。不安の増強は酸素需用の増加につながるため、すみやかに患者・家族の不安を緩和する援助を行う。
①不安の徴候と精神状態のアセスメントをする。
②安楽な体位とし、口すぼめ呼吸などの呼吸方法を説明し、看護師とともに実践する。
③患者および家族が安心できる環境を提供する。呼吸困難が強い場合には、患者をひとりにしないように配慮する。
④患者および家族の不安を軽減するために、治療環境(処置、音、病室など)や治療を受けている場所・時間についてオリエンテーションをおこなう。
⑤呼吸状態にあわせ、患者の不安、心配事について率直に表現するように援助し、傾聴する。 
⑥検査方法、治療方法、入院期間の見直しなどについて、医師と協力して患者および家族が理解しやすいことばで情報を提供する。
必要に応じて医師との面談を設定する。
⑦家族あるいはキーパーソンの協力が得られるようにはたらきかける。

睡眠:COPDの急性増悪時は、呼吸困難や不安、仰臥することによる呼吸困難の悪化、普通に呼吸するために使用するエネルギー消費量が多いことによる疲労感、低酸素血症による不整脈などによって十分な睡眠・休息を得ることができない。
看護師は、患者が十分な休息・睡眠が得られるように援助する。
①睡眠・休息の状態をアセスメントする。
②安楽な体位および患者が安心する睡眠環境を整える。
③就寝前にせきを予防するための処置を行う。
④不安を緩和するための援助を行う。
⑤睡眠薬使用による影響を説明する。

排泄:呼吸困難に伴う運動量の低下や食事摂取量の減少、心不全への懸念から水分摂取を制限することにより、便秘になりやすい。
便秘によって腸内容物が横隔膜運動を妨げ、排便時の努責は酸素消費量を増加させて呼吸困難の悪化につながる。
したがって看護師は、排便習慣を整え、呼吸困難の緩和と悪化を予防する。
①排便習慣、排泄環境をアアセスメントする。
②便秘を予防するためにバランスのよい食事や水分摂取を促す。
③規則的な排泄習慣をつけるように指導する。
④腸内ガスが多く発生する食品を避け、患者および家族が排泄に影響を与える食品の選択ができるように指導する。
⑤努責による呼吸困難を避けるため、必要に応じて緩下剤の使用を検討する。

その他:セルフケアの不足を補う。

■安定期の看護
COPDは閉塞性換気障害の進行を遅らせることはできても、根治治療法はない。
したがって、患者が適切なセルフケアを維持し、もてる能力を最大限にいかし日常生活の質を確保するために、看護介入はきわめて重要である。
継続的な自己管理とライフスタイルの変更に適応し、制約のあるなかでも充実感が得られる生活に向けての援助を行う。

QOLを考慮した患者教育
COPDの患者は呼吸機能の悪化を予防するために、摂生した生活を送らなければならない。
加えて呼吸理学療法・薬物療法・酸素療法など、継続していかなければならないことが多い。
症状が安定したといえ、患者や家族は今後の生活への不安を感じ、生活のなかに生きがいを見出しにくい状況にある。
さらに、患者教育で禁止事項ばかりを言われたのでは、いまでもがんばっているのに、これ以上の我慢や努力を要求される気がしてやる気が衰えるであろう。
まず、患者の生活があって、患者自身が症状をコントロールしていく主導権と方略をもつことができ、いかにして自分らしい生活を送ることができるようになるのかを患者・家族と考えろことがたいせつである。

患者および家族(キーパーソン)への指導・教育にあたっては以下の点に注意する。
①患者が自分の疾患、予後、治療、症状についてどのように考えているのか、また、教育内容へのニーズについて把握しておく。
②患者の状態が落ち着いているときに段階的におこなう。あらかじめ患者に教育計画を渡しておき、患者および家族の了解を得て実施する。
③患者が疲労しないように配慮し、1回の時間は30~40分程度とする。
④患者および家族が受け身にならないように配慮する。
たとえば、自己管理に有効的な方法あるいは無効な方法については選択肢のある指導を行い、患者が主体的に参加できるように工夫する。
⑤指導中の患者および家族の反応を観察しながら進める。
⑥指導終了後には、感想や理解した内容を表現するように促す。
現在の心情を確認し、行った指導を評価して次の患者教育にフィードバックする。

禁煙教育
喫煙は気流制限を引きおこし、肺機能を低下させる主要な危険因子である。
禁煙することによって、肺機能の低下速度を遅らせることができる。
禁煙指導では、知識の習得だけではなく患者が真剣に禁煙しようと決意し実行するための動機づけが重要となる。
また喫煙はニコチン依存ととらえられている。
看護師は、長年の喫煙習慣による身体的・心理的依存からの脱却の困難さを理解しつつ、本人および同居者が禁煙の必要性を理解して実行できるよう援助を行う。

①患者のニコチンへの依存度、生活習慣をアセスメントする。
②患者および同居者の禁煙に対する意識・態度が禁煙のプロセスのどの過程にあるのかを評価し、患者にあったプログラムを準備する。
③呼気中のCO濃度の測定を行う。喫煙の有害性、禁煙の利益について情報を提供して禁煙の必要性を明確にし、動機付けを支援する。
また、患者とともに禁煙目標を共有する。
④禁煙の実施では、行動科学的アプローチに基づいた代償行動法、環境改善法、行動パターン変更法などがあることを説明し、日常生活のなかで具体的に実施できる方法をもとに検討する。
⑤ニコチン離脱症状や禁煙に伴うストレスへの対処方法など、禁煙維持のための効果的なコーピング方法について説明する。
⑥医師の指示のもと、ニコチン代替療法について指導する。
⑦禁煙中の患者を励まし、継続への支援を行う。
⑧長期間の禁煙のためには、同居者や周囲の人たちの理解と協力を求める。あるいは、同居者や周囲の人たちへも禁煙するよう助言する。

薬物療法
薬物療法は、COPDの症状を軽減あるいは増悪を防ぎ活動性を維持するために必要であり、なによりも継続することが重要である。
薬物療法の必要性を理解し、QOLの向上のためにも服用を継続できるように援助する。
①服用している薬剤の必要性・作用・容量・おこりうる副作用についての理解度を確認し、理解や服用の継続が不十分であるとおもわれることがらについて詳しく説明する。
②確実な服用を継続するため、服用スケジュール表を作成したり薬を時間ごとに分別する箱を用意したりするなど、患者のニーズにあわせた工夫をする。
③吸入療法の指導は、初回導入時だけでなく実施状況を確認しながら繰り返し行い、有効な吸入が継続できるように援助する。
④薬剤の相乗作用がおこる可能性があるため、市販薬を避けるように指導する。また、他の薬剤を服用すている場合は、拮抗作用がないことを確認する。

食事・栄養
COPDは慢性の消耗性疾患である。肺の過膨張、横隔膜の平坦化、気道閉塞による呼吸効率低下によって呼吸筋にの仕事量はふえる。
酸素消費量の増加は、エネルギー消費量の増加を意味する。
栄養障害を示唆する体重、身体組成の変化はCOPDの基本的病態生理と関連しており、QOLの低下、症状の増悪、再入院のリスクと関連も指摘されている。
また、栄養状態の低下は筋力につながるだけでなく、免疫力も低下する。
適切な栄養状態を維持することは、症状の増悪を防いでよりよい生活をおくるために必要な援助である。

①%標準体重(%BMI)、呼気ガス分析から安静時エネルギー消費量、アミノ酸分析皮膚の状態などから包括的に身体の中の栄養状態を評価する。

②食欲、消化器症状の有無、咀嚼、嚥下状態、食事調査を行い、摂取栄養量をアセスメントする。

③アセスメントの基づき食事への介入を行う。
・食事前に口腔ケアを行う。また、部屋を臭気がこもらないように換気するなど環境を整える。
・食事の準備は疲れるため、休息しながらおこなうように説明する。
・必要な栄養が摂取できるように、食事30分前には準備を終えて休めるようにする。
・1日3回の食事にこだわらず、4~6回の分食をすすめる。
・食料品を購入した際、宅配を利用するなどエネルギーを消費しない方法について説明する。
・食後に疲労感、呼吸困難を自覚する場合は、休息を促す。

④食事内容は以下の点に注意するように指導する。
・腹部膨満による横隔膜の挙上や、胸郭の拡張が抑制されることによる呼吸への悪影響を防ぐため、腸内ガスを発生させる食品を多くとりすぎない。
・脂肪を中心とした少量で栄養価の高い食品、高タンパク食を摂取するように指導する。
・栄養補助剤は食事に影響しない程度に利用するように説明する。
・心不全を予防するために味付けは薄味にし、季節の食材をもちいるように指導する。

⑤肺機能と栄養状態によって至適摂取エネルギーがことなるため、栄養士と連携をはかりメニューや栄養補助食品などのついて相談する。

⑥分泌物の粘調度を低くし喀出を容易にするため、適切な水分を摂取するように指導する。

⑦定期的に体重を測定することを指導する。

感染予防
COPDの急性増悪のおもな原因となる気道感染を予防し、それらの早期発見につとめる。
①インフルエンザの予防接種を受ける。
②手指からの接触感染による上気道への感染を遮断するため、手洗いやうがいを励行する。
③潜在的な感染の危険性から身を守るため、混雑した場所は避ける。
必要があって外出する場合は、必ずマスクを着用するように指導する。
家族が流感などに感染した場合は、家の中でもマスクを着用する。
④感染徴候を理解し、感染症に羅患した場合は我慢することが症状の悪化につながることを説明し、早期に対処するように指導する。
⑤排たん後は口腔ケアを行い、清潔な口腔を維持するように指導する。

包括的呼吸リハビリテーション
包括的呼吸リハビリテーションとは、患者およびその家族に、医師、看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、栄養士、ソーシャルワーカー、薬剤師などの専門職が参加するプログラムであり、継続した個別的なケアを行う。
患者のセルフケア能力を高め、呼吸困難の軽減、運動耐用能の改善、健康関連QOL、ADLの改善が期待できる。
看護師は専門職種間のコーディネーターとして連携を保ちながら、患者や家族を支援していく。
呼吸リハビリテーションは、リラクセーション、呼吸訓練、胸郭可動域訓練、運動療法、肺痰法などにより構成される。
安定期のCOPDを対象とする場合は、運動療法が核となる。
重症のCOPDの場合は、呼吸訓練、リラクセーションなどを効率のよい運動療法をおこなうためのコンディションづくりとして位置づけ、実施する。
中断せずに継続することにより効果がえられるため、日常生活のなかで続けていくためには患者への動機づけをはかることもたいせつな介入である。

酸素療法
在宅酸素療法について指導する。

その他
①タバコ以外に気管・気管支を刺激する可能のある物質(冷気、調理中の煙、大気汚染物質、香水、ヘアスプレーなど)を避けるように指導する。
②精神的ストレスは気管支刺激物質と同様の作用を起こすおそれがあるため、ストレスへの対処方法、カウンセリングなどの心理的支援を行う。
③必要に応じて気分転換活動をすすめる。徐々に活動範囲を広げ、疲労を予防するため、定期的な休息時間を設けるように指導する。
④とくに高齢者ではうつ傾向、不安神経症を伴うことが多いといわれている。うつ状態は呼吸困難感を増幅させ、リハビリテーションを妨げる要因となったり、社会活動への参加意欲を低下させることがある。
そのため、必要に応じて心理・社会的支援を行う。