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1)皮膚の構造
皮膚は人体の表面をおおい心臓・肺・肝臓などの諸臓器を保護しているが、単なるおおいではなく生命の維持に必要なさまざまな機能を担っている。
皮膚は成人では約1.6㎡の面積があり、皮膚(表皮と真皮)の重量は約3kg、皮下組織も含めると約9kgにも及ぶ人体最大の臓器である。
皮膚の色調は人種・年齢・性・部位・個人などによって異なるが、メラニンと赤血球中のヘモグロビンが皮膚色を左右し、そのほかカロチンの量や角層の性状なども関与している。
皮膚の表面には皮溝という大小のみぞが交差し、その間に皮丘が形成されている。
また皮溝に区画された三角形・多角形の領域は皮野とよばれている。
皮膚の厚さは1.5~4mmで、掌蹠(手の平と足の裏)がとくに厚くなっている。
皮膚は上層から表皮・真皮・皮下脂肪織の3層に分けられ、その下に筋肉・骨などの組織が存在している。

(1)表皮
 表皮は被覆表皮と付属器表皮からなり、付属器表皮は表皮毛包部と表皮内汗管部にわかれている。
表皮の厚さは0.06~0.2mmであり、掌蹠は角層が厚い分0.6mmと厚くなっている。
表皮の下面は凹凸面となり、真皮と密着し、表皮の真皮に突出している部分を表皮突起、真皮が表皮に突出している部分を真皮乳頭とよぶ。

①表皮の構造
表皮は下層から基底層・有棘層・顆粒層・透明層・角層の5層からなる重層扁平上皮あある。
角化細胞は基底層で分裂し、角化しながら上行し表層から脱落する。
なお、基底層から顆粒層までに約1か月間、角層通過に約14日間を要するとされている。
基底層・有棘層・顆粒層を合わせてマルピギー層と呼ぶこともある。

基底層
表皮最下層の1層で、基底細胞とよばれる円柱形の角化細胞からなる。
基底細胞の真皮側にはヘミデスモソームがあり、基底板と結合している。

有棘層
基底層から顆粒層にいたる5~10層の角化細胞層を有棘細胞という。
下方ほど多角形で、
上に行くにしたがって横に扁平となる。
上層にいたると層板顆粒がみられるようになる。

顆粒層
有棘層と角層の間に存在し、細胞質中に好塩基性の小顆粒、ケアトヒアリン顆粒がみられるようになる。
細胞膜は肥厚しはじめ、細胞膜内側に周辺帯を形成するようになり、また層板顆粒が豊富になる。

透明層
手掌・足底では角層が厚く、角層と顆粒層の間に光学顕微鏡では光を強く屈折させる透明層がみられる。

角層
表皮最上層で、核や細胞内小器官が消失した角層細胞が存在する。
光学顕微鏡では好酸性の重層する薄膜状構造、電子顕微鏡ではケラチン模様がみられ、角質細胞の周辺帯は発達し厚くなる。
細胞間には層板顆粒の層板構造がみられる。

②表皮を構成する細胞
表皮を構成する細胞のほとんどは角化細胞であるが、そのほかに基底層にはメラノサイトとメルケル細胞が、有棘層にはランゲルハンス細胞がそれぞれ少数存在する。

■角化細胞(ケラチノサイト)
角化細胞はデスモソームと張原線維を有する細胞で、中間径線維の1つであるケラチン線維を合成する。
一般に基底細胞は真皮乳頭層直上に存在すると考えられている幹細胞を除いて、さかんに分裂増殖し、上方へ移動して有棘細胞へと分化する。
有棘細胞はやがてケラトヒアリン顆粒を有する顆粒細胞に分化したのち、核や細胞内小器官を失い、ケラチン線維を内包し、肥厚した細胞膜(周辺帯)を有する角質細胞へと分化し、その後デスモソームを失い角質細胞は脱落する。
この角質細胞は物理・化学的に強靭で生体防御上重要である。

角化細胞は種種のタンパク質からなるデスモソームで互いに結合し、ここに張原線維が内側より収斂している。
このデスモソームを光学顕微鏡では細胞間橋とよぶ。
角化細胞は生体を外的な物理・化学的な刺激から守るだけではなく、外界の病原微生物の侵入も防ぐ役割を担っている。
たとえば、角化細胞は外界の病原微生物の刺激に対し種のサイトカインを産生し、またさまざまな炎症性刺激により種種の免疫担当細胞と接着し、その活性化をおこなうことが知られている。

■メラノサイト
メラノサイトとはメラニン色素を産生する樹枝状突起を有する細胞で、表皮基底層・外毛根鞘上部・毛母・脳軟膜・網膜色素上皮に存在し、ときに消化管粘膜・卵巣・副腎にも存在することがある。
光学顕微鏡では基底細胞と比較して明るく見えるが電子顕微鏡では細胞内にメラノソームがみられる
メラノソームはⅠ期からⅣ期まで発達段階があり、Ⅰ期のメラノソームにはメラニンの沈着はまだなく、チロシナーゼを律速酵素とするメラニンの合成によって徐々にメラニンがメラノソームに沈着し、Ⅱ期からⅣ期へと成熟する。
Ⅳ期のメラノソームは順次、樹枝状突起に移動し、樹枝状突起の先端より角化細胞に貪食され、おもに基底細胞に取り込まれる。

■メルケル細胞
メルケル細胞は表皮、外毛根鞘、毛盤や口腔粘膜基底層の下面などに存在する、核の切れ込みがある細胞で、やや明るくみえる。電子顕微鏡で見ると細胞内に有芯顆粒が存在し、隣接する角化細胞とは小型デスモソームで結合している。
メルケル細胞は神経終末に接しており、触覚など神経系細胞とのかかわりが指摘されていたが、最近では単層上皮型のケラチンや消化粘膜に存在するケラチンK20を有していることから、上皮由来の細胞であることが明らかになった。

■ランゲルハンス細胞
ランゲルハンス細胞は表皮有棘層に存在する樹枝状突起を有する大型の澄明細胞で、細胞質にベーバック顆粒というテニスラケット状の小体を有することを特徴とする。
ランゲルハンス細胞は骨髄由来の細胞で、カドヘリンという細胞接着分子を介して、周辺の角化細胞に接着している。
ランゲルハンス細胞は抗原提示細胞としてはたらいており、皮膚表面からの異物を貪食し、その抗原の処置を行い、真皮をへてリンパ節に移り、T細胞に抗原を提示し、免疫反応を引き起こす。
また、形態学的に類似しているが、バーべック顆粒を保有していない細胞があり、表皮では未確定細胞、リンパ節では指状突起細胞とよばれるが、これらの一部はランゲルハンス細胞がベーバック顆粒を失い、抗原提示能のたかまったものだと考えられている。

(2)表皮・真皮接合部
表皮真皮境界部には、光学顕微鏡で見るとPAS染色で赤色に染色される基底膜が存在する。
さらに基底膜を電子顕微鏡で見ると基底細胞から離れて基底板があり、基底板と基底細胞の間の電子密度の低い層は透明板とよばれている。
そして、基底板と基底細胞膜を係留細線維が結んでいる。

(3)真皮
真皮は表皮の下に存在する線維成分・基質・細胞成分からなる結合組織で、上から乳頭層・乳頭下層・網状層の3層に分かれている。

線維成分
線維成分は、①真皮結合組織の約90%を占める膠原線維、②エラスチンからなる伸展性のある弾性繊維、③レチクリンからなるとぎん染色で黒く染まる少量の細網線維からなる。
細網線維は幼若な膠原線維とかんがえられている。

基質
基質は繊維間または細胞間を満たす有機成分・血漿タンパク・水・電解質からなり、有機成分はムコ多糖体と糖タンパクがおもなものである。

細胞成分
細胞成分には線維芽細胞・組織球・肥満細胞・形質細胞などがあり、線維芽細胞は繊維成分とムコ多糖体を産生する。

(4)皮下脂肪織皮下脂肪織は真皮と筋膜の間を占め、脂肪層ともいわれる。脂肪細胞の集団が結合組織
の隔壁で囲まれた脂肪小葉からなる。

(5)皮膚の脈管と神経
皮膚には、脈管(血管・リンパ管)と神経が分布している。

血管
皮下の動脈から上行した動脈は真皮と皮下組織の境界部で動脈叢をつくり、ここから小さな動脈が真皮を上行し、真皮乳頭層の下層で再び血管叢を形成する。この血管叢から毛細血管が真皮乳頭にループ状に走行し、毛細血管静脈となり、乳頭下層の静脈に連絡する。

リンパ管
毛細リンパ管は乳頭下層に分布し、そこから真皮のリンパ管網につながり、皮下のリンパ管に連絡する。
さらに所属リンパ節を通ったのち静脈に注ぐ。

神経
神経には自律神経と知覚神経がある。自律神経はエリクソン汗腺・立毛筋・血管周囲に無髄神経として多数存在し、これらの器官を支配する。
知覚神経は痛覚・掻痒・触覚・圧覚・冷温覚をつかさどる。

(6)皮膚付属器
皮膚には毛・脂腺・汗腺・爪などの特殊な機能をもつ器官が存在し、これらを皮膚付属器と総称する。

①毛包脂腺器官
毛を取り囲んで毛包が存在し、そこに上からアポクリン汗腺と脂腺が連続して付着し、立毛筋もその下の毛隆起に付着している。
毛包は下より毛包底から立毛筋付着部までを変動部、立毛筋付着部から脂腺導管開口部までを峡部、脂腺導管開口部から毛孔までを漏斗部と区別されている。
毛には、毛が伸びる時期(成長期)、毛の成長が停止して退縮する時期(退行期)、発毛停止の時期(休止期)の3周期を繰り返す毛周期があるが、毛周期によって伸縮する部位は立毛筋付着部以下の変動部で、それより上の部位は固定部とよばれる。

②エクリン汗腺
エクリン汗腺は分泌部と導管部にわかれ、導管部は被覆表皮に直接開口し、表皮内汗管と真皮内汗管にわかれる。
真皮内汗管は、上から直導管と曲導管にわかれる分泌部は真皮と皮下組織の境界あたりに存在し、筋上皮細胞に囲まれて明調の漿液細胞と暗調の粘液細胞が1層並んでいる。大量の水分を分泌し、体温を調整している。

③爪
爪は爪甲・爪郭・爪床・爪母からなり、爪甲は角層が特殊に分化しいたもので背面から背爪・中間爪・腹爪の3層からなる。爪床は、表皮マルビギー層に相当する表皮部と真皮からなる。
また、爪郭は爪甲の両側縁と爪根とをおおう。

2)皮膚の機能
(1)皮膚の保護作用
①物理的外力に対する保護作用
皮膚および皮下組織は、ある一定の厚さがあり、傷をつけられても心臓・肺・肝臓などの諸臓器に傷が及ばないようになっている。
さらに角化細胞はデスモソームやギャップ-ジャンクションという細胞接着構造があり、角化細胞同士を強固に接着させているため、強い物理的外力でないと角化細胞をはがすことはできない。
また、表皮の表面は核を失って死んだ角質細胞がおおっているため、表面を多少傷つけても生きている細胞が傷つくことはない。
真皮には膠原線維や弾性繊維があり、強い力で押されたり、引っ張られても皮膚は簡単に破れたりすることはない。
また、皮下脂肪織は体調調整作用ばかりではなく、クッションとして外界の物理的外力を吸収する作用がある。

②光線に対する保護作用
一般に紫外線の波長が短いほど核酸やタンパクに変性を及ぼすが、UVCはオゾン層に吸収され地上には到達しない。
しかし他の紫外線は地上に到達し、日焼けなどの急性の皮膚障害のほかに長期に紫外線の暴露を繰り返すと、老人性色素斑などのしみや膠原線維や弾性線維の変性をもたらし、しわの原因ともなる。
また有棘細胞がん・基底細胞がん・悪性黒色腫などの皮膚がんの原因ともなる。
そこで表皮にはメラニンが存在し、このメラニンが紫外線を吸収し、生体を紫外線から守っている。
そのためメラニンは、表皮基底細胞の核の上を取り囲むように存在し、核を保護している。
表皮では、紫外線によってたえず核DNAが損傷を受けているためDNAの損傷を修復する酵素が存在するが、この酵素が欠損すると色素性乾皮症になる。
その他、角質細胞は光を物理的に散乱させる作用がある。
また、ケラトヒアリン顆粒を構成するプロフィラグリンの分解産物のうち、ヒスチジン由来のウロカニン酸は紫外線を吸収し、光が直接生体内に入るのを防いでいる。

③化学的刺激に対する保護作用
角質細胞は、酸やアルカリまたは有機溶媒などの化学物質に対して強い抵抗性を示し、ほとんど化学変化を受けない。
また、角質細胞間にはセラミドをはじめとする種種の細胞間脂質が存在し、これらが中心となって外界からの水や化学物質の侵入を防いでいる。
さらに、皮膚の表面を脂腺から分泌される皮脂と表皮由来の表皮脂質が混じた皮表脂質がおおっていて、種種の化学物質から皮膚をまもっている。
皮膚のバリア機能が破綻すると種種の化学物質が表皮内に侵入し、湿疹・皮膚炎などを引き起こす。
このように皮膚は化学物質が生体内に侵入しにくいようになているが、強アルカリなどの物質に対しては弱く、化学物質によっては熱傷(化学熱傷)を引き起こす。
また、真皮には化学的変化を受けにくい膠原線維が存在し、表皮が破壊された場合でも真皮の膠原線維が化学物質の侵入をある程度くいとめることができる。

④病原微生物に対する保護作用
皮脂は皮表脂質の約95%を占めるが、おもにワックスエステル・トリグリセリド・スクアレンからなる。このうちトリグリセリドの一部は毛包内の存在する細菌などのリパーゼで分解され、遊離脂肪酸となる。
この遊離脂肪酸によって皮脂膜は酸性(pH5.5~7.0)となり、外界の物質に対する緩衝作用と同時に殺菌作用を示す。
また、表皮細胞は、ディフェンシンや塩基性タンパクなど強力な抗菌あるいは抗真菌作用のある物質を産生する。
これらの物質のために、いくつかの病原微生物は生きている角化細胞には侵入できない。

⑤ターンオーバー(物質交代による保護作用)
表皮は新陳代謝によってたえず新しい角化細胞におきかわられて、古い角質細胞は垢となって、生体から排除されている。
そのため、皮膚に付着した病原微生物などは表皮の脱落によっても排除されている。
とくに病原微生物や化学物質によって炎症をおこした部位や、種種の物理・化学的刺激で障害を受けた角化細胞が存在する部位では、表皮の脱落・再生が亢進する。
表皮細胞が基底細胞層で分裂し、最終的に垢となって剥離するまでの時間(表皮細胞のターンオーバー時間)は、正常では約45日かかるとされているが、諸説がある。

(2)皮膚の免疫機能免疫
アレルギーに関与する免疫担当細胞にはT細胞やB細胞などの一般的な免疫担当細胞があるが、皮膚では皮膚に特異的に存在するランゲルハンス細胞がある。そのほか、角化細胞は単に表皮を構成するだけでなく、皮膚の免疫・アレルギー反応に重要な役割を担っている。

(3)皮膚の保湿作用
前述した皮脂膜や角質細胞間脂質は、外界からの刺激物が生体内に侵入するのを防いでいるばかりでなく、生体内の水分が蒸発するのも防いでいる。
さらに角質細胞には天然保湿因子(NMF)が存在し、この物質は、遊離アミノ酸・尿素・電解質からなり、水分の吸収および保持などのはたらきをしている。
とくにフィラグリンの分解産物のうち、グルタミン由来のピロリドンカルボン酸(PCA)は強い吸湿作用を有する。
もし皮膚の保湿作用が低下すると、皮膚は乾燥し、かさかさした状態(乾燥肌)からひび割れ状態となる。

(4)皮膚の体温調節作用
汗には蒸散する際に気化熱を奪い、体温を下げるはたらきがある。皮膚には汗腺が存在し、とくにエクリン汗腺は汗を分泌することによって体温調節に役立っている。
また、皮膚表面に存在する血管は暑いときには血管が拡張して体温を放散し、寒いときには血管が収縮し、体温の放散を防いでいる。
そのほか、表皮の角層と皮下脂肪織は熱の不良導体で、身体の熱の放散を防ぐとともに外界の温度が直接体内に及ぶのを防いでいる。

(5)皮膚の知覚作用
知覚には痛覚・触覚・圧覚・冷温覚などがあり、外界から刺激が加わると、知覚神経から脊髄、脳へと伝導され、脳はその刺激に反応して身体を保護するような指令を出し、その刺激が有害であれば、無意識にあるいは意識的にその刺激を避ける行動をとる。
しかし、これらの刺激の一部は脳に到達せず、知覚神経から途中で自律神経に伝達され、その刺激が加わった場所に反応がみられることがある。
(皮膚反射)たとえば皮膚に温熱刺激を加えると、その部位の皮膚の血管は拡張して赤くなり、反対に冷やせばその部位の血管は収縮し、皮膚は蒼白となり、立毛筋が収縮し、いわゆる鳥肌の状態となる。

(6)皮膚の分泌・排泄作用
皮膚から分泌されるおもなものに、皮脂と汗がある。
①皮脂の分泌
皮脂分泌量は年齢・部位によって異なり、顔面で多く、ついで胸部・上背部の順である。これはにきびのできやすい部位に一致している。また、皮脂分泌量が最も少ない部位は下腿で、乾燥肌の生じやすい部位が下腿であることにも一致している。一般に、新生児では前額部の皮脂量は多いが、小児期には少なくなり、思春期から再び増加する。女性では10~20歳代にピークに達し、その後急激に減少するが、男性では30~40歳代にピークに達し、50歳代以後も比較的多い。 皮脂の役割は先に述べたように殺菌作用ばかりではなく、皮膚表面に皮脂膜を形成し、皮表をなめらかにしっとりさせる作用があり、これが低下すると皮膚がかさかさしてくる。

②汗の分泌汗は体温を低下させる温熱性発汗以外に、異常な精神的緊張によって生じる発汗(精神性
発汗)がある。温熱性発汗はほとんど全身の汗腺から生じるが、精神性発汗は特定の体部、すなわち手掌・足底・腋窩などからの発汗が主である。
汗腺は汗を分泌する腺であるが、ヒトの場合はエクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類存在する。
エクリン汗腺はほとんど全身に分布していて、主として温熱性発汗と関係がある。
アポクリン汗腺は特定の体部のみに存在し、幼児には発達がわるく、思春期にいたって急激に
発達する。動物の場合はアポクリン汗腺が発達しているが、ヒトの場合はアポクリン汗腺は腋窩部・外耳道・乳輪・肛門周囲などかぎられた部位に存在する。
アポクリン汗腺が思春期以後に著名に発達して、発汗を開始するようになること、その分泌物が特有の臭気を発することから、この汗腺は体臭を生じ、性生活と密接な関係をもつものと考えられている。
精神的発汗は腋窩にも著名にみられるため、アポクリン汗腺が関与しているように思われがちであるが、やはりエクリン汗腺の分泌が主体である。
発汗は、自律神経によって調節されていると考えられている。
たとえばエクリン汗腺は交感神経によって支配され、発汗は主にコリン作動性神経によって分泌されるアセチルコリンによって生じ、分泌されたアセチルコリンはそこに局在するアセチルコリンエステラーゼによって分解・不活化されることによって発汗がおさまる。
さらに、これら自律神経に制汗信号を出す高位の中枢の存在が推測されており、体温調節に関与する発汗中枢は視床下部にあり、精神性発汗のそれは大脳皮質にあると推測されている。

温熱による障害
熱傷(火傷、やけど)
高温のものに曝露または接触して生じる皮膚障害である。
熱傷の深度・面積以外に気道熱傷の有無、年齢、合併症の有無などを勘案して重症度を判定するが、熱傷の重症度および症状は時間とともに刻々と変化するので、治療を行いながらそのつど修正する。
受傷面積の算定は、重症度を評価するうえで最も重要である。受傷面積の算定法には9の法則(ウォーレス)が汎用されているが、頭部の占める割合が大きい幼児・小児には5の法則(ブロッカー)が便利であり、さらに正確な算定法としてランド-ブラウダーの公式がある。
また、小範囲の受傷面積の算定には、患者の手掌面積を1%とする手掌法を用いることもある。熱傷深度は日本熱傷学会の熱傷深度分類に従って診断する。また、受傷部位が気道であるとその死亡率は最大20%以上増加し、顔面・両手の熱傷では瘢痕拘縮、外陰部の熱傷では全身的な感染症が問題となる。
このような因子を加味して熱傷の重症度を総合的に判定する基準が考案され、熱傷指数(BI)や熱傷予後指数(PBI)、アルツの基準などがある。
また、わが国では原因や年齢なども加味したSCALDSスコアも実用化されている。

治療
受傷部の処置としては初期には十分な冷却、ついで創部の保護と感染予防が大切である。
近年、凍結乾燥豚皮で被覆する方法がよく行われるが、広範囲受傷例では早期に積極的な植皮、とくに少量の皮膚で広範囲をカバーし得るメッシュ植皮がよく用いられる、その他、壊死組織は細菌の培地とのるのでデブリドマンを行い、浮腫が強い場合は減張切開を行う。
初期補液量の算定にはエバンス法、ブルーク法、バクスター法などの公式がある。

熱傷患者の看護
熱傷とは、熱によって生態が化学的・物理的に可逆的・不可逆的な変性をうけることをいう。
熱傷の原因としては、
①熱湯(ポットの湯・みそ汁・スープ)、
②蒸気(やかん・炊飯器)、
③熱いふろ、
④料理中の熱した油、
⑤家庭電化製品(アイロン・ホットプレート)、
⑥日光
(海水浴・日焼けサロン)、
⑦化学熱傷(フッ化水素)、
⑧医原性(電気メス・光線療法・漏電)、
⑨暖房器具(いろり・ストーブ、湯たんぽ)、
⑩摩擦熱(人工芝)、などがある。

熱傷の重症度は、深度・面積・合併症の有無などで決定される。また熱傷の深度は、第
Ⅰ~Ⅲ度までに分類される。
熱傷においては、病態によってアセスメントのポイントが変わってくるという特徴がある。
病態は4つに分かれており、
①ショック期(受傷直後から36時間前後の期間で、ショック症状に注意)、
②ショック離脱期(ショック期終了から数日間で、心不全・肺水腫に注意)、
③感染期(受傷後約1週間ぐらいからで、感染・発熱に注意)、
④回復期、となる。

熱傷の看護では、熱傷の深度・面積・部位によって症状や治癒過程が異なるので、それ
ぞれの時期に合わせたケアを行う必要がある。
受傷面積の算定法には、成人には9の法則、幼児・小児には5の法則がある。
重症度の評価(深度と熱傷面積)には、熱傷指数(BI)などが用いられる。

(1)アセスメント
①熱傷の重症度:深度・面積・合併症の有無などから算出(第Ⅰ~Ⅲ度)、9の法則
②問診:受傷時間・原因・既往歴・体重
③熱傷の合併症の有無:気道熱傷・ショック・尿量減少・チアノーゼ
④バイタルサインの確認:体温(上昇)・頻呼吸・血圧(低下)・頻脈

(2)看護活動
●受傷部位の処置
受傷直後は衣類をつけたままで、すぐに流水で冷却する。
受傷後は浮腫が生じることがあるので、指輪・眼鏡・コンタクトレンズなど創部を圧迫する原因となるものは取りはずしておく。
四肢や体幹など全周性に熱傷をおった場合は、患肢に浮腫が生じるため、局所の虚血や筋区画症候群をきたす。このような場合は減張切開を行う。

●ショックへの対応
受傷が全身に及ぶ重度熱傷では、ショック症状に対する対応が重要である。
体液の喪失によって循環不全に陥る危険があるので、すぐに輸液を開始し、尿道カテーテルを留置する。
患者の意識レベル・水分出納・バイタルサイン・嘔吐・出血・滲出液の量などを観察する。

●受傷部の感染予防と疼痛管理
受傷部は皮膚のバリア機能が失われ、感染しやすい状態にある。受傷部の状態を見ながら、可能ならばシャワー浴を行う。
また、熱傷による疼痛は顕著であり、とくに包帯交換時は激痛を訴える。
シャワー浴の前に麻酔薬による鎮痛薬を投与するなど、疼痛の緩和に。
精神的な不安も疼痛を増強させるので、患者の訴えに耳を傾ける。
シャワー浴の際には石鹸をよく泡立てて、創部に刺激を与えないように古い軟膏や壊死組織を除去する。
なお、創部の感染の有無、治癒過程によっては使用する軟膏を変更する。

●精神的動揺の緩和
患者は、受傷直後は突然のできごとに精神的ショックを受け、動揺し、興奮状態になることもある。
したがって、患者の心情を理解するよう心がけ、精神的動搖の緩和をはかる。
なお、うつ状態になることもあり精神科・心療内科の協力も必要となる。

●栄養管理と消化器系の管理
重症熱傷では、受傷面からの多量の滲出液によって低タンパク血症になりやすく、また感染をおこしたり、電解質バランスがくずれて治癒をおくらせる原因となる。経口摂取が可能ならば高タンパク・高エネルギー食とする。
経口摂取ができない場合は中心静脈栄養
などが行われるため、全身状態を含め輸液の管理を行う。
熱傷の合併症として胃・十二指腸潰瘍(カーリング潰瘍)をおこすことがあるので、黒色便になっていないか観察する。

●保湿と関節拘縮の予防
熱傷によるびらん面・潰瘍面が露出しているときは体温を奪われやすいので、全身の保温に注意する。
日常生活動作(ADL)の状況をみながら、関節拘縮の予防のためにリハビリテーションを早期から進めていく。
痛みによって自力で体位変換が出来ない場合は、褥瘡予防につとめる。