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第一頚椎は環椎とよばれ、文字通り指輪のような形をしている。
この骨には椎体がない。後述するように、椎体は第二頚椎にとられてしまっている。
横突起のつけねのところに上面に大きな関節窩があって、頭蓋のこれに対応する関節頭をうける。
頭を前後左右に傾ける運動は、主としてこの関節で行われる。
環椎の下面には平らな関節面があって、第2頸椎と関節をつくる。
第2頸椎は軸椎とよばれ、椎体から上方へ円柱状の歯突起がのびだしている。
この歯突起が本来は環椎の椎体にあたるのである。
歯突起の側面は関節面になっていて、環椎のそれに応じる小さい関節面に接し、また靭帯でおぎなわれて車軸関節をつくる。
すなわち歯突起を軸として環椎がまわるのであって、頭の水平回転は主としてこの関節でおこなわれる。
このように第1と第2の頚椎は独特の形をしているが、第3のもの以下は一般的な形をしている。
ただ注意しべきは、横突起の基部にまるい横突起というあながあいていることで、これは頚椎の目印となる。
このあなは脳をやしなう椎骨動脈の通り道である。

頚椎症性脊髄症
頚椎は頭部を支える重要な柱であると同時に脊髄を保護する役割をもっている。
前後屈、左右への側屈や回旋といった大きな可動性をもち、かつ安定性を必要とするため、骨や椎間板、関節にはつねに負荷がかかっている。
そのため、経年齢的変化や外傷による影響などを受けやすい部位である。
頚椎は年齢とともに変化し、靱帯も肥厚してくる。
この結果、頚椎の中心に位置する脊髄が圧迫されると頚椎症性脊髄症が発症する。

症状
手足のしびれに始まり、手指の功緻運動障害、歩行障害、膀胱直腸障害といった多様な神経症状を示す。
①功緻運動障害:はしを使う、文字を書く、などの細かい運動能力が低下する。
②歩行障害:下肢に痙性が生じるため歩行が困難になる。これを痙性歩行という。
階段歩行にてすりが必要となり、次第に杖を使っても起立歩行が不可能になっていく。
③膀胱直腸障害:頻尿、残尿感、尿閉などが生じる。

治療
保存的治療
頸部の安静を目的とした装具療法や牽引、頚椎筋力強化などのリハビリテーションを行う。
薬物療法としては消炎鎮痛剤や、神経の回復に効果があるビタミンB12の投与などが行われる。
保存的治療に抵抗性の場合は手術療法が行われる。

手術療法
①頚椎前方除圧固定術
前方から頚椎を圧迫している骨組織を取り除き、新しく脊柱を再建する。
骨盤から採骨して移植するため、愈合に時間がかかる。
②頚椎後方除圧固定術
後方から脊柱管を拡大し神経の圧迫を取り除く。
最近では後方の筋群をできるかぎり温存する術式など、術後の合併症を少なくする努力がされている。

合併症
手術療法による神経症状の改善については60%程度だと考えられている。
しびれなどの神経症状が残存することが考えられる。
手術的治療の合併症としては第五神経障害、軸性疼痛の出現、術後血腫などが考えられる。
・第五神経根神経障害
頚椎術後に第五神経根が麻痺し、肩の挙上制限が出現することがある。(2~10%程度)
多くは時間の経過とともに軽快するが、数か月持続する例もある。
・軸性疼痛
術前になかった頸部痛の出現や、術後に頸部痛の悪化を認めることがある。(2~20%程度)
・術後血腫
術後数時間以内に麻痺が進行する場合、最も考えられるのは体内への出血によって脊髄の圧迫が起こる術後血腫である。
対応が遅れると不可逆的になるので、手術などの緊急処置が必要になる。

注意すること
・術前には、転倒によって急速に症状の悪化を起こすことがあるので、歩行に十分注意するようっ説明する。
・手術法の違いによって、術後の安静度が変わる。固定術の場合は、頚椎安静のために装具の着用が必要になる。
患者に説明するにあたり、術前に、どのような手術を行うか、術後の安静度はどうなのかをスタッフ間で共有しておく必要がある。
・必ずしも神経症状がすべて軽快するわけではない。ある程度残存、とくにしびれは残りやすいことを患者に理解してもらう必要がある。
一般的に神経症状の改善は術後2年程で認められるが、それを過ぎても残存する症状は以後も持続するようである。
・術後数時間以内に出現する麻痺症状は、術後血腫の疑いがある。
迷わず報告し、検討する必要がある。