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開復術(消化管手術)の特徴
●腹腔内で手術操作が行われる
①上腹部操作時、胆叢・胃などの牽引や、圧迫による迷走神経反射で、急激な血圧低下を起こしたり、不快感・悪心・嘔吐をきたしやすい。
②胃内容物除去のため、胃管カテーテルが挿入される。
③腹腔内にドレーンが挿入される。

腹腔内ドレーン挿入の目的
・横隔膜下、ダグラス窩(仰臥位で最も低位となる部位)
→有害な貯留物を排除する。
・吻合部
→縫合不全を防ぐ。
・臓器切除部
→後出血に備える。

●直後、消化管など感染の恐れのある部位を扱う
<腹腔内洗浄>
腹腔内に散布された恐れのある細菌を洗浄し、その濃度を希釈する目的で行う。

●麻酔法
硬膜外麻酔、脊髄麻酔、全身麻酔が適応となる。

ケアのポイント
●手術開始前
①胃管カテーテル挿入
・胃管カテーテルが胃に達していることを胃液または空気で確認する。
・屈曲や自然抜去しないように、絆創膏で固定する。
・十分な吸引を行って、胃内容物の逆流を防ぐ。
・胃管カテーテルからの排液状態を観察する。

②直接介助者は器械、ガーゼをカウントしながら器械台に準備する。
この際、機械についているネジなどがゆるんだり、はずれていないか厳重にチェックを行う。

●手術中
①患者の全身状態の観察
・特に血圧の変動、および不快感、悪心の訴えに注意する。
・手術操作によるものであれば、術者に伝え、操作が一時中断することもある。
・胃内容物の貯留のないように、胃管カテーテル吸引する。

②消化管操作中の介助
・直接介助者は直接消化管の手術操作に使用した器械と他の器械とを厳重に区別する。

③腹腔内洗浄
・洗浄の前に、それまでの吸引瓶の排液量を必ずチェックする。
・洗浄液は、38℃前後の生理食塩水を通常1~2ℓ使用する。
その際、冷たい生理食塩水を使用することは、患者のバイタルサインに変化をもたらしやすく危険である。

④腹腔内ドレーン挿入
・ドレーンからの排液によるガーゼ汚染に備えて、ガーゼは厚めにあてる。
・横隔膜下は、呼吸運動に伴って低い陰圧となるので、ドレーン内の貯留液が腹腔内に逆流する恐れがある。
これを防止するため、ドレーンの先端をウォーター・シールすることがある。
・延長チューブの先端が確実に水中に位置するように固定する。ただし、チューブの先端を瓶の底で塞がないように注意する・

・ドレーンの固定
抜去を防ぐため、ドレーン挿入部は皮膚に1針いとをかけるが屈曲しないように切込みガーゼで被覆し、被覆外は絆創膏で皮膚に固定する。
延長管との連結はタイガンテープで固定する。
⑤患者の体内に器械やガーゼを残さないため、閉腹前に必ず器械・ガーゼをカウントする。
・手術終了前に、術前器械台に準備した器械、ガーゼの総数と、閉腹前の総数とが同じであることを、術者、直接介助者と間接介助者の間で確認する。

●手術終了後
①胃管カテーテルからの排液の量・性状の観察を行う。
②腹腔内ドレーンからの排液状態(量・色)の観察を行う。
③創部のあてガーゼの汚染状態を観察し、出血などによる汚染の程度が著しい場合は医師に報告する。

術後ケアの要点
1.ベッドの準備
・柵付ギャッチベッド
・リネン類(シーツ、横シーツ、ラバシーツ、バスタオル、タオル、電気毛布、毛布、紙おむつなど)
・バイタルサインチェック用具
・含嗽水、吸いのみ、ボール
・酸素吸入の準備
・その他(吸引装置、排液瓶、連結管、クランプ鉗子など)

2.麻酔回復室から病室まで
●申し送りを受ける
・患者の呼吸、顔色、チューブ、ドレーン点滴などに注意し、静かに移送する。
・患者をベッドへ移すときは必ず医師の監視下においておこなう。
●患者への連絡
手術の終了と、医師より説明のあることを伝える。

3.帰室直後のケア
●気道の確保と酸素吸入
医師の指示により酸素吸入を行う。
●一般状態の観察

<バイタルサインのチェック>
・血圧、静脈の変動
・呼吸:呼吸数
    遅速
    喘鳴
    呼吸音
・体温:低体温
    発熱
・脈拍:緊張状態
    頻脈
    不整脈

<麻酔覚醒状態のチェック>
呼名反応、痛覚反応、指示反応の有無。

●保温
四肢冷感、悪寒、低体温には電気毛布、温タンポを使用する。

●創部の観察
・ドレーン挿入部位の確認と排液の性状と量を確認する。
・出血、滲出液、排液の有無をみる。
・包帯交換の必要性の有無をみる。

●胃管カテーテルの管理
・挿入位置の確認と固定をする。
・排液量・性状の観察をする。

●水分出納量のチェック

●体位
・水平仰臥位とする。
・麻酔が完全に覚醒し血圧が安定したら上半身を15度

●深呼吸と痰喀出
①麻酔が覚醒したら、声かけて深呼吸、痰喀出を促す。
②痰喀出困難時
・呼吸音と肺雑音を聴取し、有効な体位の交換を行う。
・医師に指示によりネブライゼーションを行う。
・医師による気管内吸引を行う。

4.術後72時間までの観察とケア
●観察
①バイタルサインのチェック
・医師の指示により、2~3時間ごとのチェックを行う。
②ショック前駆症状の有無を確認する
③呼吸音と肺雑音の聴取を行う
④腹部症状の観察をする
・悪心・嘔吐、吃逆の有無をみる。
・腹部の膨満と腹壁の緊張度をみる。
・超蠕動音の聴取を行う。
⑤創痛の観察
・部位・程度・性質。
⑥創部の観察
・滲出液の有無・量・性状・臭気。
⑦胃管カテーテルの観察
・排液の性状・排液量・臭気・流出状態。
⑧排尿状態の観察
⑨輸液と輸血の観察

●ケアの実際
<体位交換>
 側臥位、セミファウラー位を2時間ごとに交互に行う。

<創痛の緩和>
創痛は患者にとって最も不安であり、不眠や譫妄状態、ときにはショックなどの誘因となることもあるので、十分な情報を収集し、活用・対処しなければならない。

2).創部痛の情報収集と看護判断
●問診・・・・・・「どの部位が」「いつごろからか」「どのように痛むのか(激痛、鈍痛、間欠痛、持続痛)」「自制できるかできないか」など。 
●視聴・触診・・・苦痛溶顔貌の有無、顔色、呼吸数の増加、呼吸の深さ、発汗の有無、創痛部位の異常、体位の苦痛の有無、不穏な体動の有無など。
●バイタルサイン・血圧の上昇、脈拍の増加、呼吸音と性状、体温など。
の計測
●患者の状態・・・鎮痛・鎮静薬を使用するべきか。        
時間的経過をみるべきか。
           体位の工夫をするべきか
           患者のそばにいて不安を軽減させるべきか。
           痛みをかなり我慢しているのではないか。
●適応な対処・・・看護判断のうえ、医師への報告が必要なときは詳しく経過や状態などを報告し、指示を受ける。
           体位の工夫や安楽などを報告し、指示を受ける。
           体位の工夫や安楽になるような工夫に努め、患者の創痛緩和に対処する。

<痰喀出の援助>
創部痛緩和への援助の実際
●鎮痛・鎮静薬の使用
薬品を使用するときは、アレルギーやショックなどの副作用が起こることがあるので、慎重な態度で正確な投与をしなければならない。
そこで、使用前後の患者の状態観察や、薬品使用・方法・部位の確認を十分に行う。
●体位の工夫
術後の体位は創痛の緩和のみならず、呼吸・循環の促進をはかる体位であり、安全で、かつ安楽であることを基本とする。

③患者にわかりやすく説明することで、患者の協力が得られ、痛みも和げられる。
・喀痰は自分の力による咳嗽がなければ出ない。
・喀痰の貯留と肺合併症の関係。
・創は、十分縫合されているので哆開はしない。

創部痛の誘発原因の除去
①膀胱に尿が溜まりすぎて下腹部がはっているとき。
②腸管にガスが貯留して腹部が鼓腸・緊満しているとき。
③術中体位による褥瘡や運動障害が起きているとき。
④絆創膏かぶれによる表皮剥離が起きているとき。
<包帯交換な介助と感染の防止>
・ドレーンの挿入部位と固定の確認。
・ガーゼの滲出液、分泌物の性状・量の測定。
・創部と周囲皮膚の清潔保持。
<胃管カテーテルの管理>
・挿入位置の確認と固定。
・1日1回固定部位を変え、咽頭・鼻腔粘膜の同一部位の圧迫による循環障害を防止する。
・カテーテルのミルキング(閉塞の防止)を行う。
・排液の性状の観察と量の測定。
 通常の経過として、腸管運動の回復とともに排液の性状は胃液化し、量は減少傾向となる。
・腸管運動が活性化、または排ガスがあれば医師の指示のより抜去する。

<腹部症状の緩和>
―悪心・嘔吐のある場合―
・胃管・腹部の膨満の有無の観察と胃管カテーテルの移動を行う。
・閉塞による胃内容貯留はないかをチェックする。

―吃逆に対して―
・胃管カテーテルのミルキングと胃内容の吸引を行う。
・大きな吸気のあと、吸気を我慢させてみる。
・医師の指示を受け投与を行う。

―腹部膨満には―
・体位の変換、ファウラー位、または側臥位とする。
・医師の指示を受けて腹部の温罨法を行う。
・医師の指示により排バス、坐薬挿入、浣腸を行う。

<水分出納チェック>

<自然排尿への援助>
膀胱内留置カテーテルは尿路感染防止のため、できるだけ早く医師の指示を受けて抜去する。
カテーテルをクランプし、尿意ごとに開放を2~3回繰り返す。尿量や性状をチェックし、異常がなければ次の尿意で抜去し、自然排尿を促す。

<排ガスの促進>
・体位の変換を行う。
・胃内容の停滞を避ける。胃管カテーテルのミルキングと吸引を行う。
・医師の指示により腸蠕動亢進薬の投与をする。

<身体の保清>
・発汗や出血・滲出液・消毒液などによる皮膚の汚染を取り除く。
・末梢循環を促し、血行の促進をはかる。
・体位・ドレナージなどの圧迫による皮膚の循環不全の予防。
・陰部・口腔などの粘膜部位の分泌物の除去と感染予防。
・精神的不快感を取り除く。

●保清の時期と方法
・時期
術後1日目(15~20時間以上)より開始する。抜糸後、入浴が可能になるまで続けるが、一般状態の不安定な場合は医師に相談をする。

*イント*
①手術後は疼痛の強い。できるだけ苦痛がないようにする。
②チューブやドレーン、血管確保部分が抜けたりしないように注意する。
③全身の皮膚や粘膜を素早く観察する。
疼痛を最小限にするには
・創部に近い部分や、チューブなどの挿入部には力を入れない。
・液窩、顔面、頸部、陰部、殿部など、発刊の多い部分を中心に、短時間で行う。
・下肢を屈曲させると腹筋の緊張がとれ、疼痛を緩和できることもある。
・何をするにも一つ一つ先に声をかけ、突然触れて疼痛を誘発しないようにする。
・側臥位にするときには、創部を患者の手掌で少し押さえ気味にし、膝を立てさせ、向こうとすると側の足を下に足を組ませる。津日に顔を側臥位方向に向け肩と腰を平均した力で支え、仰臥位とする。患者が力を入れすぎるとかえって疼痛が生じる。
・シーツのしわなど十分に伸ばし、圧迫原因を除く。
・歯ブラシは口腔内の粘稠な分泌物を取り除くために使用し、術後数日の浅い場合は半座位などで行わせ、含嗽などの介助をする。
・術後24時間以内に、急に座位などにすると血圧の低下や、呼吸困難、挿入ドレーンよりの出血、疼痛の増大などの症状を起しかねない。
・術後時間の浅い患者は、体位を変えた後の一般状態の変動を観察する。
・舌苔など口腔内の異常や、口臭の度合いも観察する。
チューブ、ドレーンや静脈カテーテルなどの事故を防ぐには
・各チューブなどの固定を確認する。
・長さに余裕を持たせる。
・病衣は患側から健側へ着せるが、このとき各チューブは余裕をもって身体の横に置く。
・座位や側臥位にしたときは必ず各カテーテルを確認し、急な出血などに注意する。
・自力で歯磨きができるようになっても、側にいて観察する。特に胃管チューブが入っている間は口腔内に水が入ると誤嚥することもあるので、ゆっくり行うように指導する。
・義歯は患者の状態をみたうえで、よく洗って装着する。あまり長くはずしていると合わなくなることもある。また発語も義歯を入れはほうがスムーズのでき含嗽もしやすい。
全身の皮膚・粘膜を素早く観察する
・褥瘡後発部位を中心に観察する。
・術中体位(側臥位など)を考え、長く圧迫されたと思う部位をみる。
(左側臥位体位→左側肩、液窩、腸骨部、大転子部)
・創部や各ドレーン挿入部の皮下出血など皮膚の異常をみる。
・陰部や肛門周囲は、患者に羞恥心を抱かせないように行う。術後は分泌物の増加で、思ったより汚れている。またベッド上排泄は、いつも湿気を帯びた状態となったり不潔になりやすい。
抜糸後の保清
・一般手術では、術後7~10日の間に抜糸をすることが多いが、抜糸後1~2日目ころには軽くシャワーから始める。ただし、感染創や術後の患機能低下などがある場合は、医師の許可があるまで清拭を続け、部分浴などの計画をたてる。
・患者がシャワーから入浴へと、状態の変動なく進められるよう経過・援助する。
・洗髪は、状態が許す範囲なら抜糸前でも行う。
・術後は抵抗力の減退、全身状態の変化なども考慮し、無理をせず部分的に進めていく。

5.術後7日目までの観察とケア
●観察
<腹部症状>
・腸の蠕動音の聴取
・鼓腸の有無
・排ガスの状態
・悪心・嘔吐の有無
・腹部(部位・性質)の有無
<創部>
・ドレーンの状態
・分泌物の有無・性状・排出量
・創部周囲の発赤・腫脹・内出血
<一般状態>
・合併症の早期発見
・体温の上昇の有無、検査データの把握
●ケアの実際
<創部>

<合併症予防>
<食事>
・胃管カテーテル抜去後、水分から始め、悪心・嘔吐などの腹部症状がなければ、流動食より段階的に粥食とする。
・1回量は少なく回数を多く徐々に量を増していく。
・食事摂取量、内容のチェックを行う。
<離床の開始>
・段階を追って開始する。頻脈、冷汗、出血などに注意する。高齢者は特に注意を要する。
<排便の促進>
 経口開始後、便意がなければ腹部の症状を観察し、医師の指示のより緩下剤の与薬、または浣腸を行う。
<身体の保清>

6.術後合併症とケア
●急性胃拡張

*ケア*
・絶食
・胃管カテーテルにより胃内容を排除し胃洗浄
・水分・電解質・栄養の経静脈的補給
・酸素吸入
・医師の指示により胃腸管運動促進の使用
・体位交換(側臥位、ファウラー位)
・腹部症状の観察


*ケア*
・胃管カテーテルを挿入し、胃内容の吸引排除
・水分、電解質の補正
・医師の指示により肛門よりの排ガス・浣腸
・医師の指示により腸蠕動促進薬の使用
・悪心・嘔吐、腹部膨満の程度、腹痛の有無の観察
●縫合不全
*症状*
 術後5~6日目ごろより発症する。
・発熱 ・腹筋の緊張
・頻脈 ・悪心・嘔吐
・腹痛 ・胃内容の吸引量の増加
・顔色不良
*ケア*
・絶飲食→経静脈栄養(高カロリー)
・胃内容の吸引
・安静とセミファウラー位の保持
・抗生物質、化学療法薬の使用
・腹腔内ドレナージの介助とドレーンの管理
・腹部症状の観察

7.退院指導
・定期的受診の必要性の説明
・内服薬について
・規則正しい食生活
・受診を必要とする症状の説