2015年3月の記事一覧

小児のバイタルサイン測定。成人との違い

≪小児のバイタルサインの特徴≫
小児のバイタルサインには、成人と共通しないいくつかの特徴がある。

①小児のバイタルサインはきわめて不安定であり、環境や個人的条件により変動しやすい。
したがって、その変動を最小限にし正確な正常値を得るために、諸条件を整えることと、高度な技術が必要である。

②小児は病状の進行が一般に成人より早いが、言語機能が未熟なため訴えが不明確である。
したがって、異常の早期発見・早期対処には、バイタルサインの変動を注意深く観察することが重要である。
入院中は、バイタルサインを定期的に測定し、それらの値を正しくアセスメントすることが必要になってくる。

③小児のバイタルサインの測定には、発達段階に応じた測定器具と測定方法、測定技術がある。
これらを誤ると正確な測定値を得ることが出来ない。
また、小児のバイタルサインの正常値は発達段階により異なるのでそのことを踏まえたうえで測定値をアセスメントしていく必要がある。

*体温*
目的:発熱や低体温の有無、熱型を観察して、健康状態を判断する。

小児の体温の特徴:小児の体温は、年齢によって差が見られ個人差も大きい。
正常体温は、一般に成人に比べて高く、成人とほぼ同じような値になるのは10~16歳といわれている。

測定部位と測定方法:体温は、口腔・腋窩・直腸で測定する。
小児によく用いられるのは直腸と腋窩である。
≪直腸用体温計:主に乳児に使用する≫
①測定する部屋の室温を確認する。
②体温計の挿入部位に、ワセリンなどの潤滑油を塗布する。
③乳児を仰臥位にして、おむつをはずす。
④両足を持ち上げて、体温計を肛門から2.5~3cm静かに挿入する。
⑤1分~1分30秒が経過してから、静かに体温計を抜いて値を読む。
⑥体温計を消毒する。
正常値:36.0~37.5℃
*個人差がある!!

≪腋窩用体温計:電子体温計≫
①腋窩部位に発汗がみられる場合は、タオルで軽く押さえて汗を拭く。
②デジタル表示部に電池、電圧表示サインが表れているか確認する。
③体温計の感知部位(プローブ)を、腋窩中央45度の角度に挿入して腋で押さえる。
④ピピッの合図音が聞こえたら、静かに体温計をはずす。
⑤体温計を消毒綿で拭いてから、収納ケースにしまう。充電式の電子体温計は、充電  セッティングをする。
 
看護上の留意点
・水銀ガラス体温計は、破損しないように取り扱いに注意する。
・乳児の手の届く場所には、絶対に体温計を置かない。
・下痢が持続している乳児は、直腸用体温計を使用すると直腸刺激になるので、液窩で体温を測定する。

バイタルサイン測定のコツ
・乳幼児のバイタルサインの測定は、呼吸→脈拍→体温の順で測定すると、安静値を得やすい。
・測定するときに怖がる小児は、遊びの工夫(ぬいぐるみを使用する、測定前に絵本を読む、など)をしながら、測定するとよい。

*呼吸*
小児の呼吸の特徴:小児の呼吸は、回数・パターンともに年齢によって変化が見られる。
正常な呼吸数は一般に成人に比べて多く、リズムは不規則であるが、成長とともに呼吸数は減少し規則的になってくる。
呼吸のパターンも成長とともに以下のように変化してくる。

①乳児・・胸郭が軟弱であり、呼吸筋の発達が未熟であるので横隔膜の運動による腹式呼吸
②幼児期・・胸郭が発達し成人の形態に近づき、呼吸筋も発達してくるので胸式呼吸が加わり胸腹式呼吸
③学童期・・ほぼ成人に近い胸式呼吸
 男児:腹式呼吸
 女児:胸式呼吸
測定部位と測定法方法:胸腹部の上下運動をみて測定する方法、軽く手を当てて測定する方法、聴診器を用いて呼吸音を聴いて測定する方法がある。
測定は、睡眠時・安静時に気付かれないように行う。
泣き出してしまったり、興奮したりすると正確な値を得ることができなくなる。

☆年齢別にみた正常な呼吸数(回/分)☆
年齢 新生児 乳児 2~3歳 5~6歳 10~11歳 14歳
呼吸数 40~50 30~40 25~30 20~25 18~22 19

呼吸の異常:呼吸困難は正常時に使われていない呼吸筋で努力呼吸している状
態をいい、陥没呼吸・呻吟・下顎呼吸・鼻翼呼吸・起座呼吸・シ
ーソー呼吸などの型がある。

看護上の留意点
・食事後、入浴後、泣いた直後などの測定は避ける。
・脈拍を測定しながら、小児に気づかれないように測定する。
・呼吸異常がある小児は、聴診器を用いて肺野の性状を観察する。

*脈拍*
目的:脈拍数、緊張度、リズムなどを観察して、循環状態を判断する。

小児の脈拍・心拍の特徴:小児の脈拍は一般に成人より多く、成長とともに減少してくる。
生理的変動の1つである呼吸性の変動は一般的に小児に高頻度にみられ、睡眠時や安静時に著名であり、吸気に増加し呼気に減少する。
この変動も成長するにつれて少なくなり成人に近くなってくる。

測定部位と測定方法:脈拍は、浅側頭動脈、大泉門、総頸動脈、上腕動脈、橈骨動脈、尺骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈、足背動脈で測定できる。
①安静時や睡眠時に測定する。
②小児の状態に応じた測定部位を選ぶ。
③測定する動脈に沿って、示指、中指、薬指の3指を軽く触れる。
④脈の性状も観察しながら、1分間の脈拍数を測定する。

☆年齢別にみた脈拍・心拍数の正常範囲☆
年齢 正常下限 中央値 正常上限
新生児 70 120 170
生後1~11ヶ月 80 120 160
2歳 80 110 130
4歳 80 100 120
6歳 75 100 115
8歳 70 90 110
10歳 70 90 110
女 男 女 男 女 男
12歳 70 65 90 85 100 105
14歳 65 60 85 80 105 100
16歳 60 55 80 75 100 95
18歳 55 50 75 70 95 90

脈拍・心拍数の異常:脈拍・心拍数の増加は、発熱・高度の貧血・低酸素血症・
甲状腺機能亢進症・心筋炎・心不全などで見られる。

看護上の留意点
・食事後、入浴後、泣いた直後などは、脈拍数が増加するので測定は避ける。
・新生児、乳児、心疾患児は、心音で測定する。聴診器の採音部(冷たいまま当てると刺激になるので、必ず手で温めてから当てる)を心尖部(心音が最も聴きやすい)に当て、心音の性状も観察しながら1分間の心音数を測定する。

*血圧*
目的:心臓からの総血液量や細動脈の収縮と拡張の程度を観察して、状態を判断する。
小児の血圧の特徴:小児の血圧もまた成長とともに変動する。血圧は、幼若なものほど低く、年齢とともに高くなる。
血圧を左右する因子:
① 急性影響因子=姿勢・運動・哺乳・食事・排便・入浴・環境温・ストレス・
     機嫌・測定用具・測定技術
② 慢性影響因子=性別・年齢・肥満度・食塩過剰摂取・運動不足・家族性

測定部位:
① 上腕部=上腕動脈の肘窩部
② 大腿部=膝窩動脈の膝窩部
③ 下腿部=内足果の踵部外側にふれる後脛動脈または足背の中央やや外足果
    よりの足背動脈

血圧の上下肢差・左右差:下肢の収縮期圧は上肢より10~20mmHg高く、左右では右上肢のほうがやや高いことがある。

マンシェットの選択:小児の年齢や体の大きさによって、マンシェットの幅は変える必要がある。上肢の2/3を覆うものが適当である。

☆年齢別に見たマンシェットの幅と長さの目安☆
年齢 3ヶ月未満 3ヵ月~3歳未満 3ヵ月~6歳未満 6~9歳未満 9歳以上
幅×長さ(cm) 3×15 5×20 7×20 9×25 12×30
       

☆年齢別に見た正常な血圧☆
新生児 乳児 幼児 学童 成人
収縮期圧 60~80 80~90 90~100 100~110 110~130
拡張期圧 60 60 60~65 60~70 60~80

血圧の異常:
① 高血圧
乳児=110mmHg   10歳未満=130mmHg
幼児=120mmHg   10歳以上=135mmHg以上
《拡張期圧》
各年齢とも90mmHg以上

② 低血圧
《収縮期圧》
乳児=60~70mmHg   10歳未満=80~90mmHg
幼児=70~80mmHg   10歳以上=90~100mmHg以下

2015年03月31日(火)|未分類

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